作品情報 2019年アメリカ、カタール、カナダ、イギリス映画ドキュメンタリー 監督:ハッサン・ファジリ 上映時間:87分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シアターイメージフォーラム 2021年劇場鑑賞225本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村
【ストーリー、感想】
アフガニスタンの映画監督、ハッサン・ファジリは2015年、タリバンから処刑宣告を受けたことを知り、妻と幼い2人の子供を連れ、隣国のタジキスタンに亡命を申請するが、長く待たされたうえ却下される。
一度は故郷にもどるものの、タリバン内の知人から命の危険を知らされ、ヨーロッパへの脱出を決意。イラン、トルコ、ブルガリアとわたっていく。たが、想像以上に困難な旅が待ち構えていて…
映画が上映されるということは、無事脱出できたわけですが、幼い娘のナレーションで始まるというのも胸が痛くなります。映画を見ていると、亡命が失敗する可能性も十分あったわけですから。
アフガンは米国の撤退でタリバンが全土を支配したことでニュースになりましたが、既に数年前から映画監督のような文化人は処刑対象となっていました。普通に町に暮らしているなか、タリバンに知人や近所の人が殺されるのが日常になっているのが怖い。監督も家族もそれでも故郷のアフガニスタンに住みたがっていたわけです。
しかし、友人でタリバンに入った男から警告されいよいよ亡命を決意。家族ぐるみの付き合いも、タリバンのような組織の狂気の前では役に立たないということを淡々と撮っていてリアルでした。ユーゴにしろルアンダにしろ、以前は友人であり近所の人だった人が突然襲い掛かってくるわけで、それがフィクションでなくドキュメンタリーとして流れるのが怖い。
さらに、ブローカーをはじめ難民を食い物にする連中、難民を敵視するヨーロッパの右翼などを避けながら旅を続けなければなりません。幼い子供たちがこんな過酷な中でも笑顔を忘れないのは人間のたくましさを感じさせますし、逆にこんな辛い中でも笑うしかできないという悲惨な現実が待っている人が、今もなおいることを忘れてはならないわけです。
ただ、監督が手持ちのスマホでとっただけなので、難民キャンプのリアルな様子などは分かりますが、アフガンがどういう情勢なのか、ヨーロッパでなぜこれだけ反難民の嵐が吹き荒れるかというのは描かれていません。このへんは事前に予習したほうがいいでしょう。さらに、やむを得ないとはいえ、構成などもすっきりしておらず、似たようなシーンにちょっと見ているこちらの集中力が途切れる点もあります。ただ、それを含めてのドキュメンタリーの真実なんですよねえ。アフガニスタンの映画を見るのも初めてですし、いろいろ勉強になった作品でした。
【2021年に見た映画の最新記事】