作品情報 2021年日本映画 監督:今泉力哉 出演:志田彩良、鈴鹿央士、井浦新 上映時間:115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞225本
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【ストーリー】
幼いころ母(石田ひかり)が家を出てしまい、父(井浦新)に男手一つで育てられた女子高生の国木田陽(志田彩良)は、家事をしつつ高校生活を楽しんでいた。ある日、父から好きな人が出来たと告げられる。やがて父はその女性、美子(菊池亜希子)と再婚し、連れ子で4歳のひなた(鈴木咲)と暮らすことになる。美子は穏やかな性格なもののひなたは元気いっぱいで、今まで慣れていた生活ががらりと変わり、とまどう陽。
一方、陽の幼馴染の清原陸(鈴鹿央士)は、心臓に異常がみつかった。中学で活躍したバスケットボールもやめて、陽は同じ美術部に入った陸に淡い好意を抱くようになるのだが…
【感想】
実母に捨てられたことが心の傷となりつつ、父と2人だけで暖かい家庭を作ってきた陽。そこへ、美子母子の登場で、父との関係はリセットされ、新しく義母と義妹ができることになります。美子は配慮してくれますが、ひなたは4歳ということでわがままいっぱい。姉ができた喜びもあり、何かとからんできます。2人に悪意がないことがわかっているだけに、行き場のないストレスがたまる陽の心理は、みていてハラハラします。高校生という多感なとしごろだけに応援したくなる。
一方、陸の心臓病と父親が海外へ単身赴任ということもあって、清原家は母(西田尚美)と父方の祖母(梅沢雅代)の関係がギクシャクしています。陸も自分の心臓に負い目を感じていて、何とももやもやした日が続きます。この2人の近くて遠い関係をなかなか埋められない感覚がいかにもリアル。
仲良しグループの鈴木沙樹(中井友望)は母子家庭で貧しいことがコンプレックスになっています。陸に好意を抱いているようですが、陽との関係を壊したくないのか、自分の気持ちを表にだすことができません。思春期って自分のことを過大評価したり、逆にコンプレックスを多大に感じたり、何ともいえない感覚がでてしまいます。そこから大人へ向けて少しずつ変わっていく様子を、今泉監督は丹念に描いています。
さらに、4歳のひなたが暴れ放題というのもいかにもですが、これまでシングルマザーの美子が忙しくてかまってもらえなかった寂しさの反動が陽に向かっているというのもよくわかる。一方、ちょっと大変な子供たちを陽の両親は適切な距離から、うまいアドバイスをして見守ります。陽が実母に会いに行こうとするシークエンスをみると、こういう優しい大人たちに包まれている子供は、ちょっとぐらい大変なことがあっても変に曲がったりしないだろうと思わせてくれました。これは陸の家もそうで、ぱっと見はぎくしゃくしても、いずれも陸への愛情からということが分かります。とにかく人の優しさに癒されます。
決して派手なできごとは起きないし、登場人物はみな大人しく内にこもるタイプだけど、画面から目を離すことができません。志田と鈴鹿は「ドラゴン桜」で共演したばかりですが、特に志田が薄めのメイクで、地味な女の子になり切っているのは、高校生を主人公にした作品のなかでも白眉でした。
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