作品情報 2019年イギリス映画 監督:コーキー・ギェドロイツ 出演:ビーニー・フェルドスタイン、パディ・コンシダイン、アルフィー・アレン 上映時間:105分 評価★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞231本
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【ストーリー】
1993年、イギリスの田舎町に住む16歳の女子高生ジョアンナ(ビーニー・フェルドスタイン)は太ってドジなことから学校でも下層階級。ミュージシャンの夢を捨てきれない父(パディ・コンシダイン)は貧乏で、将来、作家になりたかったが何のあてもなかった。
ある日、音楽好きの兄、クリッシー(ローリー・キナストン)が音楽雑誌のライター募集の記事を見つける。ジョアンナはさっそく応募して、一度は不採用になったもののロンドンの出版社まで乗り込んだところ編集者たちに面白がられアルバイトとして採用される。仕事は順調にこなしていたが、アイルランドのロック歌手、ジョン・カイト(アルフィー・アレン)を取材したところ、誠実な性格に一目ぼれ。その記事を酷評され……
【感想】
序盤のくすぶったジョアンナの様子は、いかにも階級社会のイギリス映画ぽさが洗われていました。父親は定職につかず、母親(サラ・ソルマーニ)も育児ノイローゼ。双子の赤ちゃんも含め、貧乏人の子だくさんと大変な環境。まあ、それでも日本よりも立派な部屋に住んでいるのはご愛敬ですが、田舎町の下層階級のジョアンナが将来を悲観するのも無理がありません。しかも、学校ではいけてないとして男の子たちにいじめられているのですから。
彼女の部屋にはクレオパトラ、カール・マルクスからエリザベス・テーラーまで多くの偉人の写真が貼られており、彼女の内面に呼応するようにその写真が励ましてくれます。ハリー・ポッターの動く新聞写真を思い出しましたが、そういう空想に逃げるしかないというのも納得できます。
そうしたなか、奇跡的なチャンスをいかそうと、一度は断られた音楽ライターを自分の手でつかみとりにいくガッツは素敵。このパワフルさで自分の夢を切り開こうとする姿はティーンにとっての一つの手本でしょう。しかし、成功で舞い上がってしまい、どんどん嫌な奴になるのはお約束とはいえ哀しくなります。また、ロンドンの編集部の連中が、セレブじみた会話を繰り広げて、ジョアンナを心の中ではバカにしているのも嫌らしい。
家族を愛しているのに、家族をバカにされ仲が壊れそうなシーンは、思わずやめてと思いました。自伝が原作だけに実際にも似たようなことがあったのかもしれませが、こういうスノッブな連中は見ていて本当に腹が立つ。一方で、ジョン・カイトのような心根の優しいロックスターがいるのは、観客から見ても救いになりました。
90年代前半のUKロックが好きな人にはたまらない作品だと思います。でもセクハラは今よりもはるかに横行し、階級差別も平然としている連中がロックについて語るシーンは興覚め。後半のジョアンナの成り上がりぶりもふくめて、ちょっとノリについていけなくなりました。
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