作品情報 2021年日本映画 監督:熊坂出 出演:小野花梨、見上愛、古舘寛治 上映時間:117分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ユーロスペース 2021年劇場鑑賞241本
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【ストーリー】
女子高生の花田花梨(小野花梨)は高校の入学式で、前へ習えを押し付ける学校に反発して騒動を起こし、不登校となった。シングルファザーの父(古舘寛治)と喧嘩して、両親が海外単身赴任中で一人暮らしの友人、風子(見上愛)の部屋に転がり込む。
花梨は世の中を良くするために、わざと困ったふりをして、それを助けさせることで良い気持ちにさせる「プリテンダーズ」という活動を思いつく。例えば、風子が路上で血を吐いて倒れたふりをする。それを仲間が助けることで、近頃の若いものも捨てたものじゃないと思わせようというのだ。プリテンダーズの活動は動画で拡散し、気をよくした花梨はもっと過激なやらせを仕掛けていくのだが…
【感想】
冒頭、体育館で一人だけ前へ習えをしない花梨。一昔前だったらこういう高校生もいたろうけど、最近のやけに物わかりのいい若者の中では目立ちます。一方で、高圧的な教師(津田寛治)や父の困惑は同世代の僕がみても情けない。でも花梨も深く考えたわけでなく、押し付けられるのが嫌だという軽い気持ちだったということもうかがえ、今風の自意識過剰な若者の主張といった感じでしょうか。
花梨が完璧とはほど遠く、欠陥が大すぎて右往左往するというのはいかにも人間らしい。嫌なところもいいところもそろってるのが人間なんですよね。切羽詰まって、常識では考えられない行動をとるというのも、彼女にそんなに張りつめなくてもいいんだよ、と声をかけたくなります。子役から活躍する小野ならではの、演技の引き出しの幅と体当たり演技はさすがです。
そこからプリテンダーズの活動に一足飛びにいき、SNSの問題点を浮き彫りにしています。感動する動画や怒りをかきたてる動画はバズりやすいけど、それは本物かどうか。特に感動する動画は、偽物でもシェアするなんて人も多いのですが、しょせんはフェイク。一方で、作りての花梨たちもどんどん、バズる快感にはまっていく様子も現代らしい。思春期の爆発とSNSをうまくかみ合わせているし、バイトテロじゃないですが、SNSのちょっとした失敗がスティグマとなる世の中は本当に嫌ですよね。
小野の行動を受ける見上の演技もうまくかみあっており、時には共犯となり、時には喧嘩するこの時期の友情って本当にいい。恋愛要素が皆無という青春映画って隙なんですよね。さらに、古舘、津田、渡辺哲といった大ベテランから、奥野瑛太、村上紅郎、極めつけは花梨の幼い妹役の野田あかりまで、配役は完璧といっていいほど。インディーズ系に出演する俳優陣の意識の高さが伝わってきました。
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