作品情報 2020年日本映画 監督:前田哲 出演:天海祐希、松重豊、草笛光子 上映時間:115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2021年劇場鑑賞247本
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【ストーリー】
郊外に住む後藤家の平凡な主婦の篤子(天海祐希)は、自らパートに出て苦しい家計をなんとかやりくりしていた。夫の章(松重豊)は気はいいものの、家計には無頓着。ところが、章の父親(綾田俊樹)がなくなり、章は妹の志津子(若村麻由美)から、長男の責任と言いくるめられ300万円以上する葬儀費用を全部出すことになる。
さらに、長女のまゆみ(新川優愛)ができちゃった結婚をすると宣言。相手は売れないミュージシャンの松平(加藤諒)で、地方の名家である先方の意向もあり、結婚式は豪華なものにしなければならない。極めつけは一人暮らしになった母芳乃(草笛光子)の面倒を自宅で見なければなったこと。贅沢好きの芳乃は高級食材を次々に買い、家計は大火事に。とどめに、章の会社が倒産、篤子もパートを首になってしまい…
【感想】
「そして、バトンは手渡された」で今一つだったベタな演出が、本作のような人情喜劇ではうまくきいています。嫁姑の価値観の違い、家計は妻に任せっきりで無頓着な夫、成人したのに親の脛をかじりつづける子供。どれも普通にみられる題材なので、面白おかしく笑わせるのはお手の物。
松竹SKDの草笛が「若いころ宝塚に入ろうと思っていた」と言い、宝塚のトップスターの天海が「私も」というと、草笛が「あなたには無理」なんてぴしゃりというメタなギャグ。さらに出オチっぽい三谷幸喜や毒蝮三太夫のフリーダムな演技など、あまり映画をみないだろう、中高年にも分かりやすい展開が続きます。
天海がスターらしさをけして、平凡な主婦になりきっているのは意外でした。おっとりした松重との長年連れ添った夫婦ならではの軽口合戦、姑や小姑との口論バトルなど、からっと陽気に楽しめるのは彼女のスター性といえるかもしれません。笑って、どきどきして、人のやさしさにほろっとして。うまくできた人情喜劇でした。氷川きよしの主題歌もあっていました。
ただ、笑いにごまかされちゃいけないのが結構シビアな問題も取り上げていること。老後資金はどのくらい必要なのか、家族はきちんと家計の知識を共有しているのかは実は非常に重要なこと。後藤家は最初は何も知識がないなか、ピンチに次々と立ち向かわなければなりませんでしたが、映画だけあって家族をはじめとする周囲との絆が解決に結びついてくれます。しかし、現実はそんなに甘いものではないのです。これまで、平凡な家族の家計についてきちんと描いた映画ってなかったと思うので、本作を笑って過ごすのでなく、自分の身に置き換えることが必要でしょう。そして、お金のピンチはまさにみんなで助け合う人間関係が重要だと教えてくれます。
原作の垣谷美雨は「ニュータウンは黄昏て」で不動産クラスタの話題を呼んだあと、本作で節約クラスタの話題を呼びました。個人的には途中まで面白いのが、ラストは人情話ぽく収束してしまうので物足りないのですが、新作がでるとチェックする作家の一人です。
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