2021年11月13日

ジョゼと虎と魚たち

 2003年に映画化、昨年にはアニメ映画化もされたラブストーリーを韓国で映画化。前2作よりも峻烈な寂しさと美しさがストレートに伝わってきました。今年見た韓国映画ではベスト。

 作品情報 2020年韓国映画 監督:キム・ジョングァン 出演:ハン・ジミン、ナム・ジュヒョク、ホ・ジン  上映時間:117分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞251本 



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 地方の大学生ヨンソク(ナム・ジュヒョク)は路上で倒れている若い車いすの女性を助ける。ジョゼ(ハン・ジミン)と名乗る彼女は、祖母(ホ・ジン)と狭い一軒家に暮らしていた。

 ジョゼは家に引きこもり、他人を拒絶するように嘘を重ねていた。そんな彼女にヨンソクは次第にひかれるようになったのだが…

 【感想】
 韓国の切ないラブストーリー映画をみたのは久々な気がします。日本版同様、車いすのジョゼは孤高にいきており、ヨンソクとの間をなかなか詰めてきません。しかし、それも彼女がこれまで大変な目に遭っており、これ以上、裏切られたり傷ついたりするのが嫌で、孤独を選んでいるというのが問わず語りに伝わってきます。

 ヨンソクは今風の青年で、年上の教師の不倫相手になったり、後輩のスギョン(イ・ソヒ)を抱いたりと女性関係はいろいろあります。ただ、ジョゼの前ではそういった女性たちと違った素の感情がでてしまい、とまどいがあらわになります。この2人のぎこちない関係がなんともいえません。そして、ジョゼの存在が気になるスギョンのいらだちなども、観客に想像させるかたちの演出をとっています。

 韓国映画らしいのは、格差や障害者の問題をきっちりと盛り込んでいること。ヨンソクは地方の大学生で就職に苦労しています。スギョンの部屋は狭くて、抱き合うこともできません。ヘル朝鮮などといわれて、今の若い韓国人が社会的にいかに大変かというのが背景にあります。障害者についても、行政の対応がおろそかであることが背景にあることは自明の理です。

 さらに、色とりどりの四季の風景、なかでも何もかも拒絶するような降り続く雪の美しさは見ていて虜になります。さらに、グーグルストリートビューを使った演出や、ラストの英国の自然も含めて、とにかく孤独で切ない美しさがそれだけで伝わって気います。ハン・ジミンのぶっきらぼうさと、ナム・ジュヒョクのとまどったような表情がよくあっています。

 ただ、邦画でじっくり描いた部分がすっぽりと抜けています。僕自身はこの脚本は見事だなと思いましたが、邦画版のファンからすれば物足りないでしょう。邦画版の犬童一心監督は「日本の『ジョゼと虎と魚たち』の『恋』はぶつかるように描いたけど、韓国の『恋』は慈雨のように沁みてきた」とメッセージを送っています。うまい言葉だとしみじみ思いました。
posted by 映画好きパパ at 22:55 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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