作品情報 2021年アメリカ映画 監督:クロエ・ジャオ 出演:ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー 上映時間:156分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ木場 2021年劇場鑑賞255本
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【ストーリー】
人類は太古から恐竜のような捕食者ディヴィアンツに狙われていた。これに対して不死の宇宙人エターナルズは神に等しい存在であるセレスティアルズから人類を守るよう命じられ、時には科学技術の発展も手助けしていた。数百年前にディヴィアンツは壊滅し、エターナルズもばらばらになって人間に紛れてひっそりと暮らしていた。
現代のロンドン、エターナルズの女性セルシ(ジェンマ・チャン)とスプライト(リア・マクヒュー)の前に絶滅したはずのディヴィアンツが襲い掛かる。応援に駆け付けた最強の戦士イカリス(リチャード・マッデン)のおかげで何とか撃退できたが、再び人類の危機に立ち向かうため、セルシは残ったメンバーを集結させようとする。ところが…
【感想】
アベンジャーズシリーズ後の物語で、ヒーローとなるエターナルズは10人いますが、男女半々。演じる俳優の人種は白人4、アジア3、ラテン2、黒人1と分散されています。さらに、マーベル初となる同性愛者や聴覚障害者のメンバーもいます。ポリコレに配慮した顔ぶれ。また、エターナルズにかかわる人間も白人のイケメン(キット・ハリントン)、インド人の老人(ハーリッシュ・パテル)、黒人の子供(イーサイ・ダニエル・クロス)と人種、年齢が分かれているのも特徴です。環境問題や戦争と平和などの社会課題も包摂しようとしているのもすごい。
主役のセルシはアジア系で元恋人のイカリスは白人。ギルガメッシュ(マ・ドンソク)はアジア系で、恋人のセナ(アンジェリーナ・ジョリー)は白人、とカップルの色分けも人種ごと。さらにキャストでもっとも有名なジョリーが、マ・ドンソクに守られる脇役という位置づけも思い切りました。
ストーリーもなかなか練られており、オタクで知られるジャオ監督は「幽遊白書」の影響を自ら上げています。僕のような古い特撮・アニメファンからすると、ウルトラセブン、海のトリトンから攻殻機動隊、エヴァンゲリオンまでいろんな要素を感じ取り、興味深かった。神のようなエターナルズが、戦争や虐殺の絶えない人間に怒りや悲しみを覚えつつ、それでも愛や希望を捨てきれずに、メンバーでも立ち位置が変わってくるというのは、よく考えられています。そして、後半明かされる思いがけない真実の重さ。一方で、シリアスななかにもコミカルも交える手腕はさすがの対策。
ただ、150分あっても消化不良の部分があったのも事実で、ディヴィアンツとの因縁とかもっとじっくり描いて良かった。また、次回作へのひきがあるのはこの手の作品の定番ですが、ちょっとその部分が長すぎたような気もします。終盤でスパッと終わったほうがまとまりがありました。
メンバーの中では、目からビームを出すイカリスが最強の戦士なんですが、巨大な恐竜のようなディヴィアンツを素手でどつきまわすギルガメッシュの存在感にはかなわなかった(笑)。他のメンバーもそれぞれ個性があり、ヒーロー同士や、人間との関係も複雑な感情が取り巻いています。このへんの交通整理のうまさはハリウッド大作でも上のほうではないでしょうか。
僕はスーパーヒーロー映画の自分が正義だという感覚は苦手なのだけど、本作はSFチックな設定に重きを置いているのは好みですが、それだけに従来のファンからは否定的な意見も多いようです。同性愛者が出てくることや、独裁国家への批判ととれるような政治的な判断もあり、中国や中東では上映禁止になっていますが、自由に表現できる日本の映画ファンとしては応援したくなる作品でした。
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