2021年12月04日

ファイター、北からの挑戦者

 喜怒哀楽が激しい韓国映画ですが、中にはフランス映画のように日常を切り取って、無理にメリハリをつけない作品もあります。ホン・サンス監督なんかそうですね。僕はどちらかといえば苦手なタイプで、本作もそうでした。

 作品情報 2020年韓国映画 監督:ユン・ジェホ 出演:イム・ソンミ、オ・グァンロク、ペク・ソビン  上映時間:104分 評価★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞278本



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 【ストーリー】
 脱北者の若い女性ジナ(イム・ソンミ)はソウルで新しい暮らしを始めた。だが、カネもなく知人もいない孤独な生活。脱北者としられると偏見やトラブルのもとになるため、食堂でバイトしながらアパートの一室でひっそりと暮らしていた。

 だが、案の定トラブルに巻き込まれ、カネが必要となる。そのため、バイトの掛け持ちをすることになり、ボクシングジムの清掃をはじめることにした。たまたま、彼女のファイティングポーズをみたトレーナーのテス(ペク・ソビン)が彼女の才能に注目。ジムの館長(オ・グォンロク)の後押しもあり、試合に出場することになるのだが…

 【感想】
 予告編やあらすじからみると、スポーツで偏見を乗り越えていくサクセスストーリーなのかと思ったのですが、ユン・ジェホ監督は脱北者をテーマにしたドキュメンタリー畑のところがあり、いくらでも盛り上げりそうなテーマなのに、淡々と流してきます。

 演出も独特で、シーンが終わらなくても短いカットをつなぎます。例えば、ジナがジムで働く場面では、モップを持ったカットのあと、雑巾を絞っているカット、窓を拭いているカットと次々に流れ、カット間の動きはありません。日常生活だけでなく、試合もそうなので、通常のボクシング映画なら興奮する試合シーンが、わずか数十秒で終わってしまいます。

 監督は脱北者の孤独や韓国社会の一部に見られる不寛容などを取り上げたかったのでしょうから、ボクシングはあくまでも象徴で、試合に集中させないという意図はわかります。しかし、脱北者のジナの弱みにつけ込み関係を結ぼうとする不動産屋(イ・ムンビン)、脱北者だと中国で脱北の順番を末ジナの父とカネ次第で動くブローカー(パク・ヨンボク)、そして、一足先に脱北してソウルで新しい家庭を築いている母親(イ・スンヨン)など魅力的な設定のキャラクターがたくさんいるのに、あくまでもドキュメンタリータッチと短いカットにこだわったので、フィクションとしての面白さがそがれたような気がします。

 それにしても、同じ朝鮮民族なのに彼女を食い物にしようとしたり、バカにする人たちがいる一方、テスや館長のように親身になってくれる人もいる。最初はハリネズミのようにだれも寄せ付けなかった彼女の心が、良いことも悪いことも経験したうえでほぐれていき、ボクシングで体を動かすことによって加速されていくというプロットは見ごたえがありました。
posted by 映画好きパパ at 08:14 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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