作品情報 2021年日本映画 監督:草野翔吾 出演:神尾楓珠、山田杏奈、今井翼 上映時間:121分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ日比谷 2021年劇場鑑賞283本
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【ストーリー】
ゲイの高校生、安藤純(神尾楓珠)は年上のサラリーマン佐々木誠(今井翼)と不倫関係にあるが、学校ではゲイであるということを隠していた。そのため、周囲との間に目に見えない溝を感じていた。
書店で偶然、クラスメイトの三浦紗枝(山田杏奈)がBL本を買っているところに出くわした純は、内緒にしてほしいという彼女の必死の願いを了承する。紗枝は中学時代にBL好きとばれていじめを受けた過去があったのだ。紳士的な純の態度に紗枝は惹かれていき、彼がゲイとしらずに告白するのだが…
【感想】
原作小説は未読ですがNHKドラマはみました。ドラマよりも時間が濃縮されており、クライマックスなどもよりエモーショナルに感じました。ドラマ版の藤野涼子も好演で、山田ともども地味目な感じの少女の必死感があらわれており、見比べてみるのもいいでしょう。
同性愛者の世間から差別されている疎外感は正直わからないところが多いですが、僕自身も学生時代から自分が普通でないことにきづき、それを必死で隠して、自分がおかしいのではと思うこともありました。本気で自殺まで考えた純とはレベルが違うとはいえ、人と同じでないことの苦しみや何とかそこから逃れたい気持ちは理解できます。周囲の人が無自覚に傷つけてくるのに、わざと変な対応をしたり、摩擦をなくすために距離をとったり。見ているうちにトラウマがえぐられそうになりました。
めのトラウマがある紗枝にとっても腐女子バレは避けなければなりません。その一方で、本物のゲイを知らずに腐女子ワールドにはまっているため、純のことを知らずに傷つけることもあります。逆に、純が真実を話してくれないため彼女が傷つくことも。でも、そこで落ち込むのでなく、何とか明るく前へ行こうとする彼女の振る舞いは何とも素敵。役幅の広い山田にとっても代表作となるのではないでしょうか。
また、純の幼稚園のころからの親友亮平(前田旺志郎)や、クラスの人気者小野(三浦りょう太)の、等身大の高校生ぽさも好感が持てます。特に亮平の人の良さというのは、紗枝、そしてシングルマザーで育ててくれた自分の母親(山口紗弥加)ともども、純の周囲が恵まれている象徴になっています。一方で、佐々木の大人のずるさも、彼が傷ついて大人になったからではと分かります。ちゃんと、子供も大人も心情が書き込まれている脚本も素晴らしかった。
クライマックスの爆発力は、短時間に濃縮しただけあってドラマ版よりも好み。普通とは何か、阻害された怒りや悲しさ、そしてそれを救うために何が必要なのかいろいろ考えさせられました。物語のカギを握るファーレンハイトに磯村勇斗を起用したというのはちょっと驚きでした。こういう意外性のある配役は好きかも。
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