作品情報 2021年日本映画 監督:藤本匠 出演:大沢真一郎、木竜麻生、流山児祥 上映時間:78分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿K’Sシネマ 2021年劇場鑑賞284本
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【ストーリー】
45歳のニート、古川稔(大沢真一郎)は育ててくれた母親が亡くなり、函館の古い洋館に一人暮らしをすることになる。ところが、持ち主である伯父の研二(流山児祥)から取り壊すので1カ月以内に出ていくようにと告げられる。
途方に暮れる稔の前に現れたのが、この洋館に住み着いてる家事妖精の絹(木竜麻生)だった。妖精の姿は一部の人にしか見えないが、稔を臨時に洋館の主と認めて、取り壊しをやめるように姿を現したのだ。絹に尻をたたかれて、働いて稼いだ金で伯父から家を買い取るように言われるが、コロナの流行が始まり仕事はなかなか見つからず…
【感想】
ニートというと不健康で小太りの中年で、生活能力が皆無のようにみえますが、稔はきちんと身なりを整えればそれなりのイケメン。今まで引きこもっていたとはいえ、家族以外の人ともコミュニケーションができますし、あとはやる気さえでれば何とかなりそうですが、いかんせんコロナの流行という時期が悪かった。
僕自身、ニートや自宅警備員は本人が望んで、周囲に迷惑をかけないで生活できれば悪いものでないと思うし、自分もなりたかったのですが諸事情でなれませんでした。しかし、世の中は働かなければ悪という感覚が強く、リアルな作品だと外に出て仕事も恋愛もできてめでたしめでたしですし、異世界に転生モノが流行しているというのもその延長でしょう。本作品ではニートについてフラットに描いているのが心地よい。もうちょっとニート万歳だとさすがに社会から批判を受けそうですが、コロナの再流行時は世界中がニートのようなものでしたから、この描き方には好感がもてます。
中盤、ようやく仕事を見つけた稔が、嫌味な上司にパワハラを受けても懸命に働く場面があるのですが、いくら洋館を買い戻さなければならないとはいえ、そんなに無理して働くなよと声をかけたくなりました。ドラマ「家売る女」の一エピソードで引きこもりのまま投資家になるニートの話がありましたが、そんなふうに今は別の道があるだろうに、愚直ででもすねたり弱い稔は、おっさんだけど応援したくなるキャラです。
また、絹のツンデレも魅力的。稔に恋愛感情は皆無で、長生きしているせいか駄目な弟をみるように扱います。研二にも熱湯をぶかっけたり過激なことをしますし、木竜がわりと無表情に演じているだけに、そのギャップに萌えました。下手に恋愛で盛り上げようとしない脚本、演出は好みです。上映後に監督のトークショーがあり、衣装は「風と共に去りぬ」を参考にしているとか。このファッションセンスもなかなかのものです。
後半のエピソードはできすぎの感もありましたが、このご時世、コロナ禍と向き合い、それほど重い気持ちにさせないためにはこれで良かったのかなあ。「ミンボーの女」で出番は少ないけど強烈な印象を残した流山児祥がハゲオヤジになっていたのは、時代の流れをちょっと感じてしまいました。
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