作品情報 2021年アメリカ映画 監督:スティーヴン・チョボスキー 出演:ベン・プラット、ケイトリン・デヴァー、ジュリアン・ムーア 上映時間:138分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ブルク13 2021年劇場鑑賞291本
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【ストーリー】
あがり症で友人を作れない孤独な高校生エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)はあこがれのゾーイ(ケイトリン・デヴァー)の前では挙動不審で何も話せなくなってしまう。シングルマザーで忙しい母のハイディ(ジュリアン・ムーア)から鬱病のカウンセリングを受けるよう言われ、自分への手紙を課題として書かされる。
ところが、ゾーイの兄で粗暴なため学校中の嫌われ者コナー(コルトン・ライアン)に手紙を奪われたうえ、骨折してはめていた左腕のギブスにコナーの名前を書かれてしまう。そのコナーが自殺した。彼がエヴァンの手紙を持っていたため、コナーの両親(ダニー・ピノ、エイミー・アダムス)は、2人は親友と勘違い。孤独なコナーに親友がいたことを知り心が安らぐ。ゾーイとも急接近したため、誤解をとけずに親友のふりをするエヴァンだったが…
【感想】
「ワンダー 君は太陽」のチョボスキー監督だけあって、孤独なティーンを主人公にした作品ははまっています。また、原作はブロードウェーの大ヒットミュージカルで、ベン・プラットが舞台版から続投していることもあり、歌唱シーンも含めて満足いくもの。ジュリアン・ムーアやエイミーアダムスも歌うのには驚きましたが。
序盤はエヴァンのあまりにも自己卑下がいらつくほどで、唯一の友人的存在のジャレッド(ニック・ドダニ)も眼鏡をかけたアジア系というステレオタイプで話になかなか入っていけませんでした。しかし、コナーが自殺し、彼の両親のためについた小さな嘘がどんどん拡大し、しまいに取り返しのつかないところまでいってしまうというシチュエーションで一気にひきこまれました。SNS時代の怖さや多様性といった現代のテーマをうまく取り入れています。
印象的だったのは学年の中心的存在と思われたアラナ(アマンドラ・ステンバーグ)がコナーの追悼をしようと、エヴァンに協力を持ちかけるところ。よく学校ドラマであるいじめシーンはないけれど、無視することだって他人を傷つけるわけだし、でも、それって現実世界でも変な人には近づきたくないというのは僕も含めて多くの人が考えることでしょう。
また、裕福なコナーの母親が無意識に、生活に必死なエヴァンの母を傷つけてしまうことも現実であることで考えさせられます。両方とも悪意はないのだけど、だから人を傷つけていいのか、それとも防ぐ方法はあるのか。ミュージカルでさらりと流れますが、一歩考えると重たい問題だと思いました。
エヴァンが、孤立していないことを気付くようスピーチして、それがSNSで拡散するというのは現実的だけど、どこか良い話を上っ面で描いている感じもあり、単にハッピーで終わらず、きっちり優しさからとはいえ嘘をつくことの顛末を描いているのは、現実に向き合おうとする誠実なあらわれでしょうか。
ベン・プラットの内向的を強調する演技は、最初は違和感を覚えましたが次第に慣れていきます。「ブックスマート」のケイトリン・デヴァーの、繊細な演技もいい。でも驚いたのがエイミー・スマートが小太りのおばさんになっていたこと。役作りなのかもしれませんが、最初だれか気付きませんでした。
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