2021年12月23日

半狂乱

 夢を追うな、コンプラ重視だと何かとせせこましくなった世の中に怒りの声をだす、これぞインディーズ映画という傑作。粗削りな演出でしたが終盤に収斂する脚本にみとれてしまいました。

 作品情報 2021年日本映画 監督:藤井秀剛 出演:越智貴広、工藤トシキ、山上綾加  上映時間:111分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:アップリンク吉祥寺 2021年劇場鑑賞299本

 【ストーリー】
 小劇団の座長、将(越智貴広)は、観客200人と久々の大舞台で芝居を打つことになった。だが、上演開始後すぐ、思わぬアクシデントで公演中止の決断を余儀なくされる。ところが、劇団員にとってこの舞台は自分の夢をかけたものだった。劇団員の1人、樹志(工藤トシキ)が突然劇場の入り口にカギをかけ、日本刀で将と観客を脅して舞台を続行するよう要求する。

 なぜこのような事態が起きたのか。話は公演の6カ月前に遡る。

 【感想】
 夢を追いつつ演劇に打ち込むけれど、30歳近くになってもコンビニバイトなどで生活しなければならない日々。世間からはバカにされるうえ、ヤクザに絡まれるなどとことんついていない人生。犯罪は良くないことですが、そこまでしないとやりきれない社会の理不尽さへ、ストレートに怒りを叩きつける作品は貴重です。

 しかし、公演までもアクシデントが次々起き、正直、ここでうまく準備できるような人たちだったら世の中うまくいくけど、とことん世の中から見放された彼らはツキもなくなってしいるのだろうなと現実の辛さをみているようでした。登場人物たちが弱いくせにプライドが高く、欠点だらけなのもリアル。

 コンビニバイトしている樹志の鬱屈と、同僚の女性、あゆみ(山上綾加)との淡い初恋など青春映画の側面もありますが、夢と犯罪を据えたプロットは骨太。現在と準備中の過去を交互に映す演出は最初はしんどかったけど、終わってみればなるほどなあと納得です。

 映画終了後の藤井監督ら越智らによるトークショーも面白く、「夢追い人は尊敬すべし。賢ぶった世の中はクソ喰らえ」と感想をツイートしてしまいました。失礼ながら世間的には知名度がない俳優たちの、自らの体験をもとにしたことが迫真性をましています。現実に元AKB系ダンスユニットメンバーだった山上は29歳で本作が引退作品とか。また、藤井監督が撮影も手掛けているけど、全体的に彩度の低いライティングや、聞き取りずらい音声もかえってインディーズのリアルさを出しているようでした。
posted by 映画好きパパ at 05:59 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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