作品情報 2021年韓国映画 監督:チョ・ジンモ 出演:カン・ハヌル、チョン・ウヒ、イ・ソル 上映時間:117分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞307本
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【ストーリー】
2003年、ソウルの予備校に通う2浪生のヨンホ(カン・ハヌル)は、同じ2浪の女子、スジン(カン・ソラ)にからかわれたのをきっかけに、小学校の時の初恋を思い出す。運動会のリレーで転んで負けてしまい、膝を擦りむいた彼にハンカチを出してくれたソヨン(イ・ソル)という少女のことだ。
ソヨンが釜山に転校してから会っていなかったが、転校先の学校へ手紙を送ってみる。ところが、ソヨンは重病で入院していたのだ。妹のソヒ(チョン・ウヒ)は姉の代わりに代筆し、そのうち自分でも姉の名前を語って手紙を出すようになる。やがて「会いたい」といってきたヨンホに、ソヒは12月31日に雨が降ったら会いに行くと返事を書いたのだが…
【感想】
ラブレターの代筆なんて、岩井俊二作品を思い出したりしましたが、今の韓国映画らしく世相をそれとなくいれているのがいい。実家が小さな皮製品工場のヨンホは、2浪してもソウルの一流大学に合格しないと人生が積んでしまうとのプレッシャーを受けながら勉強ははかどりません。一方、ソヒも母(イ・ハンナ)が一人で切り盛りする古本屋を手伝いつつ、貧乏な自分の将来には何もないとぼんやり考えています。
日本よりも若者の格差が激しい韓国で、いわば底辺に近くて夢も希望もない若者が、手紙という古風な手段で心を取り戻していくプロットはいい。もっとも、カン・ハヌルはイケメンなので、スジンが積極的に近づいてきて、こんな美人のすぐ近くにいる女の子がいればそれでいいじゃん、と最初は白けていたのですが、やがてスジンにも欠落した理由があることがわかってきます。こういうサブキャラまでしっかりと背景を書き込んでいるのは、単なる甘い恋愛映画と思っていたこちらの予断を直してくれました。
手紙というスローな方法で、互いに会えそうで会えないのは古っぽくもみえましたけど、やがてそのペースにはまっていきます。そして2011年に話はうつるのですが、その8年の間に登場人物たちにどういう変化があるのか、見えない部分もしっかりと描いているのもまたいい。なによりラストのおしゃれなこと。そうなるだろうと思わせつつ、観客の余韻にまかせたラストと、エピローグの意外な真相。一見、単純なラブストーリーだけどずいぶん作りこんでいるのに感心しました。
カン・ハヌルの優しいけどどんくさいイケメンというのはある種ラブストーリーの王道です。一方、若手ながら名女優の域に達しているチョン・ウヒが、久々にストレートな役柄というのもうれしいし、カン・ソラのいかにも小生意気な同級生という役柄も魅力的です。基本的に善人ばかりで心が優しくなるので、冬の寒さでも癒してくれる上質なラブストーリーでした。
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