2022年01月07日

COME & GO カム・アンド・ゴー

2021年最後の作品は大阪のあちこちで生きるアジア人たちの群像劇。小さいエピソードをつなげるグランドスラム形式です。1年の最後を締めくくるのにふさわしい作品でした。

 作品情報 2020年日本映画 監督:リム・カーワイ 出演:リー・カンション、JCチー、千原せいじ  上映時間:158分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ 2021年劇場鑑賞313本



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 【ストーリー】
 2019年、令和になる直前の大阪。出張で来たマレーシアのエリートビジネスマン、ウィリアム(JCチー)。カレー屋を開きたいネパール人モウサン(モウサン・グルン)。観光ツアーのインバウンドの初老の中国人ラオファン(ゴウジー)。バイトを掛け持ちで過労死寸前のミャンマー人留学生ミミ(ナン・トレイシー)など、多くのアジア人が街に溶け込んでいる。

 日本人学校の女性教師、佳子(渡辺真起子)、徳島から初めて都会にやってきた少女マユミ(兎丸愛美)、孤独死を恐れる一人暮らしの老人飯田(桂雀々)ら大阪の人々も外国人たちとどこかでつながり、一つの町をつくっている。

 【感想】
 大阪は東南アジアの北限という言葉を聞いたことがありますが、まさにぴったりの大阪ならではの猥雑さ、人情なんかも交えた話。東京ではこんな感じのウェットさはなく、、町のあちこちにアジアの人たちが溶け込んでいるのがわかります。大阪という街が日本人、アジアのさまざまな人たちの交差点になっていたことがわかります。コロナ前の撮影ですが、これだけ国際色豊かな町はいまどうなっているのでしょうか。

 短い各自のエピソードは、かならずしもほかの登場人物と絡むとは限らないですが、それでも、この空間に同じ時に生きていたというのがわかります。アジア人といってひどいことをする日本人もいれば、疎外感を持つハーフもいる。一方で、国籍を超えた友情、愛情も生まれる。つらいエピソードもあるけれど、それも含めて町は生きていることなんでしょう。監督は大阪在住の中華系マレーシア人ということもあり、まさにインターナショナルな作品でした。

 どのエピソードも興味深いのですが、ウィリアムが接待で連れてかれたクラブで、スカウトに騙されてホステスをさせられているマユミと出会うエピソードがいい。日本は金持ちで東南アジアは貧乏なんてステレオタイプの印象が崩されます。一方で、ミミはバイト先のスーパーの店長からひどいセクハラを受けますが、バイトを首になったりビザが止められたりするのを恐れて一方的な被害を受けてしまいます。この対比が何ともいえない味わいがあります。

 そのミミが辛い目にあっても、故郷の母親と電話するときは無理に笑顔を作ろうとするのが痛々しい。日本に夢をもってきたはずなのに、それを日本人に砕かれる残酷な事実がたまりません。一方で、佳子のように親切な日本人もおり、結局、日本人という大枠でくくるのでなく、最後は個人の性格しだいということでしょう。何しろ同じ日本人であるマユミも、さんざん大人たちにだまされるのですから。観客一人ひとりが困った人、苦しんでいる人をみて自分ならどうするべきなのかと実感できます。もっとも、重苦しいエピソードがあっても、決して暗くならず、笑えるエピソードや人情もバランスよく入っているのも大阪を舞台にしたからこそうまくいっている気がします。台湾人のAVオタクの青年シャオカン(リー・カンション)とラオファンが、大阪の居酒屋で一つの中国をめぐって口論するなんて、本当にインターナショナルな感じです。

 各国の俳優は、母国では有名な人をそろえており、演技はしっかりしたもの。それでも、コロナ禍で交流が途絶えているうえ、ナン・トレイシーはミャンマーでの軍事クーデターもあり芸能活動ができないそうで、たった2年で世の中は大きく変わってしまったことも感慨があります。リム・カーワイ監督の作品は初めて見ましたが、本作は無国籍3部作の3作目だそうで、前2作もみたいのですが、東京での上映会は短時間で見逃してしまいもったいなかった。
posted by 映画好きパパ at 06:01 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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