作品情報 2019年ブラジル、フランス映画 監督:クレーベル・メンドンサ・フィーリョ 出演:バルバラ・コーレン、ソニア・ブラガ、ウド・キア 上映時間:131分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キネカ大森 2022年劇場鑑賞3本
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【ストーリー】
今から数年後のブラジルの寒村、バクラウ。水不足で苦しむ村のリーダー的存在だった老婆カルメリータ(リア・デ・イタマラシア)が亡くなり、孫娘のテレサ(バルバラ・コーレン)は給水トラックに同乗させてもらい、久々に村に帰った。葬儀でカルメリータの親友の女医ドミンガス(ソニア・ブラガ)が不吉なことを口走り、村人たちを驚かせる。
小学校ではネットで村の位置を調べようとしたところ、なんと地図から村が消えていた。UFOをみたという村人も出てきて、緊張が走る。さらに村はずれの農場一家と連絡がとれなくなり…
【感想】
カンヌの審査員賞をとっていますが、ハイソな作品ではなくものすごくB級映画で、往年のジャンル映画にオマージュをささげているような感じです。冒頭、宇宙からの視点が徐々にブラジルにおりて、バクラウへと画面がうつります。UFOが出てくるので宇宙からの侵略かホラー映画かと思わせる一方、テレサが帰郷する際、トラックが横転しており棺桶が散乱し、その棺桶を給水車がバリバリ壊しながら走るという、なんとも奇妙な絵面へと入っていきます。
ドミンガスを初め村人たちはみな、土俗的で怪しい雰囲気で「ミッドサマー」を想起します。何しろじいちゃんとばあちゃんが、すっぱだかで植物に水をやっているのだから。はたして、山奥の村ホラーか宇宙人ものか、はたまた別のものかと思いきや、序盤は村人たちの日常を淡々と映し出します。娼婦が平然と仕事をしており、ユーチューブで村出身の殺し屋の活躍をみたりしています。どんな山村でもスマホがあって動画が人気というのが現代的。それが30分すぎぐらいから、いよいよ物語が本格的に動き出すのですが、以下ネタばれで。
村人たちは貧しい寒村ゆえに異様に結束力が高かった。娼婦やトランスジェンダーがいても差別はしないものの、よそものへの警戒感は異常に強い。隣町の町長(サルダリー・リマ)が町長選のために町へやってきますが、「バニラバニラ」のようなトラックにモニターをのっけて大音量の曲を流していくというのは、ブラジルの選挙では当たり前なんでしょうか。とにかくこの異様な世界観がたまりません。そして、その町長との間に軋轢があることがうっすらとわかってきます。
そして中盤になり、村はずれの農場一家が皆殺しにされていたのがわかりますが、実はこれはアメリカからマンハントに来た一行の仕業でした。リーダーのマイケル(ウド・キア)は軍人上がりぽいですが、あとは、ブラジルの山奥なら人間狩りが楽しめると錯覚したサイコパスばかり。一見するとおたっくぽい男もまじっているのは笑います。バクラウの村民はラテン系、原住民、黒人と多様性のある人種だったのに、こちらは白人ばかり。
しかし、なめた相手が実は強かったというリーアム・ニーソンの主演映画のように、本作もなめていた田舎者が、武装したアメリカ人に対して反撃するから驚きです。後半は完全に西部劇のようなアクション映画に早変わり。ブラジル映画らしい残酷さで、結構、ハードなアクションが続いて楽しめました。この仁義なき戦いぶりは気に入りました。
それにしても正月から「ジャッリカット」と、暑苦しいアクション映画の2本立てとは、キネカ大森の担当者もすごいけど、それをみてしまう自分も、なんだかおかしい。今年1年も変わった映画をどんどん観ていきたいと思ってます。
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