2022年01月10日

明け方の若者たち

 途中までよくあるキラキラ映画かと思いきや、働く意味と青春の終わりというテーマに真正面から向き合い、予想外の展開に転がっていく傑作。ヒロインのキャスティングもうまい。

 作品情報 2021年日本映画 監督:松本花奈 出演:北村匠海、黒島結菜、井上祐貴  上映時間:116分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:東宝シネマズ日比谷 2022年劇場鑑賞4本



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 【ストーリー】
 2013年、第一希望の大手印刷会社から内定をもらった大学生の僕(北村匠海)は、同級生の石田(楽駆)から就活内定者の飲み会に誘われるが、「勝ち組」を広言する参加者になじめなかった。同じく浮いていた彼女(黒島結菜)と抜け出し、飲みなおすうちに意気投合。やがて付き合うように。

 会社員生活がスタートしたが、僕の配置先は希望していなかった総務部。毎日、地味な仕事の繰り返しに、こんなはずではなかったのにと思う日々。唯一の楽しみが、同期入社のエースで親友となった古賀(井上祐貴)の存在だ。ある日、久々に彼女と遠出することになった僕だったが…

 【感想】
 キラキラした学生生活が終わり、味気ない会社員生活が始まるというプロットは、昨年のヒット作「花束みたいな恋をした」を想起させます。しかし「花束〜」が、おしゃれな会話の連続と、主演2人のオーラでちょっと現実感がないなと思った僕としては、本作のほうがはるかにリアルに感じました。

 彼女の地味な顔立ち(失礼)と、顔立ちが整っているのに陰キャな僕の組み合わせが、いかにもそのへんにいそうなカップルに思えました。会話も普通の大学生が背伸びしている程度だし、よくあるキラキラ映画に出てくる幸せシーンを短いショットでつないだ演出もいい。

 そして、社会人生活の味気なさもあるあるです。はたから見れば指導役の先輩の中山(山中崇)や後輩女子の桐谷(高橋春織)といった周囲に恵まれているのですが、いかんせん日本の印刷業界を変えようと意気込んだのに、現実は書類にはんこを押し、しかもそのはんこの押し方を上司から指導されるくだらない日々。いや、平社員は上司にむかってお辞儀をするようにはんこを傾けなければならないなんて、本当にあるというからびっくりだけど、だから日本の大企業の多くは昭和脳だと思ってしまいます。

 また、久しぶりにかかってきた友人からの電話が実は…とか、ストレスの発散に性風俗店にいって、風俗嬢(佐津川愛美)に鋭いことをいわれるとか、駄目なところも含めて等身大に描かれているのに好感をもちました。僕自身、20代前半はオールで徹夜のあと仕事にいけたりしていたのに、いつのまにか明け方を友達と過ごすこともなくなりました。青春の喪失なんて、こんなささいなところで分かるというのはしみじみ。

 原作小説は未読ですが、まだ若い松本監督がようやく同世代のとんがった恋愛映画に負けない作品を披露してくれ、今後が楽しみです。北村、黒島以外の若手もまだ無名の役者で今後が楽しみ。そうしたなか、山中崇はもはや登場するだけでこの作品は大丈夫だと思わせる名倍プレイヤーになりましたね。彼や宇野祥平が邦画をしっかり支えているのだと思います。
posted by 映画好きパパ at 07:11 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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