2022年01月11日

成れの果て

 邦画版「プロミシングヤングウーマン」っぽいMeToo映画。人間の嫌な部分、弱い部分をたっぷり見せつけてくれる演出、演者に衝撃をうけます。ただ、原作は10年以上前の舞台だけに、この結末は、いくら田舎でも今ではどうなのかという気も。

 作品情報 2021年日本映画 監督:宮岡太郎 出演:萩原みのり、柊瑠美、木口健太  上映時間:81分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:池袋シネマロサ 2022年劇場鑑賞6本



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 【ストーリー】
 東京で暮らす小夜(萩原みのり)のもとに、故郷の田舎町に住む姉のあすみ(柊瑠美)から久々に電話があり、婚約が決まったとの連絡がある。だが、その相手は小夜を傷つけ、故郷から追い出されることになった事件の加害者、布施野(木口健太)だった。小夜は急遽、田舎に帰ってあすみを問いただすことにしたのだが…

 【感想】 
 舞台原作とあり登場人物は限られていますが、一見、まともそうな人物も含めて、そろいもそろってクズばかり。人間の嫌な部分、弱い部分が延々と映し出されます。正月そうそう、こんなしんどい映画を観なくてもと、自分にあきれましたが逆に強烈な印象を与えてくれたのも事実で、良い映画体験になりました。

 田舎の閉鎖性、大人しそうな人の抑圧されたエゴ、自分を正当化するための小狡さなど登場人物の心情はそれぞれ理解できます。ただ、実際にこういうことが起きるのかというと、あるいは起きたとしてもこういう流れの作品が今受け入れられるかというと正直わかりません。しかし、少ない登場人物だけあって、それぞれのキャラがしっかりたっているのは好感をもてました。

 だれもが自分が一番大事なわけですし、反省するのは許されたいから。そんな弱い部分や嫌な部分は僕自身身にもあるわけです。ある意味自分に正直な登場人物たちの行動をみていると、人間の哀しさが浮き彫りになり、心に刃物を突き立てられたようです。このへんは原作、脚本のマキタカズオミの冷徹さと、宮岡監督の演出がうまい。宮岡監督の前作、恐怖人形は個人的にはツボにはまった作品なので、2作続けて自分のなかでヒットした要チェック監督になりました。

 主演の萩原の存在感はさすが。まなざしだけでゾクゾク来ます。強さ、弱さをみせつけ、怒りをぶつける時の怖さは同世代の女優でもトップではないでしょうか。柊は「千と千尋」の声優の印象が強くて、実写での演技で認識するのは初めて。最初はしっくりこなかったけど、なるほど、こういう意味なのかとわかりました。短時間の登場ですが、秋山ゆずきがいかにもわがままな現代の若い女の子になりきっていて、「恐怖人形」もそうですが、宮岡監督の女性キャラの演出はお気に入りです。化粧のつかいかたも素晴らしい。

 男性キャラのクズさもたまらず、ここのところクズ役の印象が強い木口に加え、こんな嫌味な先輩はいそうという今井役の花戸祐介や、ゲイで小夜の親友という役割で今風の映画に錯覚させる野本役の後藤剛範、小心で気のいいデブにみせかけるマー君役の田口智也はたまりません。インディーズで埋もれさせるには惜しい逸品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:08 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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