2022年01月17日

ボストン市庁舎

 フレデリック・ワイズマン監督がボストン市の行政をあるがままに撮影した4時間半のドキュメンタリー。民主党色が強かったけど、アメリカの民主主義についての思いがわかり、最後まで寝ないで見られました。

 作品情報 2020年アメリカ映画ドキュメンタリー 監督:フレデリック・ワイズマン  上映時間:272分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ 2022年劇場鑑賞11本




ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【ストーリー、感想】
 ボストン市のマーティン・ウォルシュ市長は、人種や性別、貧困などによる国の分断に心を痛めており、ボストンからアメリカを変えようとさまざま政策を手掛けていた。彼は市民と積極的に意見交換に飛び回り、市民からのホットラインも市役所に設けた。2018〜19年のボストン市役所をカメラは追った。

 ワイズマン監督のドキュメンタリーは、ナレーションもテロップもBGMもいれず、インタビューもありません。ただ、起こっていることをカメラで映すだけ。会議の様子を延々と定点カメラでだされると、最初は何についての会議かもよくわからず戸惑います。ウォルシュ市長の顔も知らなかったし。

 前作の「ニューヨーク公共図書館」も同様の手法で205分の長編ドキュメンタリー。図書館の事情に詳しくない僕は途中で寝てしまいました。しかし、本作は市民の手による民主主義という、自分自身にも関係のあるテーマだけに、最後までくらいつくことができました。

 トランプ政権下で分断が進むアメリカ。会議ではボストン市民の55%が移民であるとか、黒人の資産の中央値は8ドルなのに白人は24万ドルと圧倒的な格差がでているとか、アメリカの現状が次々と報告されます。犯罪は多く、環境問題、雇用問題など市だけでは解決できない難問も山積みです。それでも、市長はとにかくいろんな人と会い、市民に自分の理想を訴え、少しでも事態を改善しようとしていきます。これだけ行政をオープンに開いているのはアメリカならではといいたいですが、実はワイズマン監督は他の都市に撮影申請をだしたものの、許可がおりたのはワイズマンの故郷であるボストンだけだったそう。市上層部の会議までカメラが入り、市長がトランプを批判しているシーンもちゃんと収めています。

 市長だけでなく、警察署の出勤前の風景や、清掃車のゴミ回収についていくなど現場のルポも多数あります。また、市長が出ていない会議で、市民が行政について、市職員と激論を続ける場面も多い。「311」という市民からのホットラインのコールセンターでのやりとりも映し出されています。とにかく、話し合うということが民主主義の根幹だということがわかります。また、駐車違反の人が、妻が急に産気づいて止める場所がなくて止めたというと、駐車違反が免除されたり、現場の担当者レベルでの判断、裁量もすごい。

 ただ、それでも市長が中心になっていることは間違いありません。彼はぶっきらぼうで労働者階級出身というのが、インテリが多い民主党のなかでは異色なイメージを与えますが、子供のころにがんになり、現在もアルコール依存症からのリハビリ途中だというのはさらに意外な印象。けれどもタフに課題と戦っていきます。市の幹部は人種、性別の多様性を心がけ、失業率は全米最下位になるなど、政策の効果もでています。彼はバイデン政権で労働長官に就任し、後任には台湾系女性のミシェル・ウーが当選しましたが、ウォルシュの路線を継続していくでしょう。

 また、いかにもアメリカらしいと思ったのは、軍と国歌へのリスペクト。日本のリベラルは2つとも嫌っていますが、ウォルシュ市長はこの2つはアメリカにとっていかに重要で尊敬すべきものであるか、在郷軍人会との会合などで身をもって示します。こうした点も含めて、アメリカの草の根民主主義がどうやってできるか参考になる作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:15 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。