作品情報 2022年日本映画 監督:坂下雄一郎 出演:窪田正孝、宮沢りえ、小市慢太郎 上映時間:105分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ湘南 2022年劇場鑑賞17本
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【ストーリー】
ベテラン議員の川島昌平(小林勝也)が突然病に倒れ、選挙がせまるなか急遽娘の有美(宮沢りえ)に後継の白羽の矢が立った。これまで東京でネイルサロンを開いて好き勝手なお嬢様生活をしていた有美は、政治に素人なのにわがままばかりで熱意は空回り。担当秘書の谷村勉(窪田正孝)は頭を抱える。
ところが、自分がベテラン政治家たちの操り人形にしかすぎないと気付いた有美は、とんでもない行動をとりだして…
【感想】
現実の政治への風刺をいれながらクスリとさせるコメディをいれて、でも、実際に日本の政治がこうだろうとぞーっとする。坂下監督の脚本と、宮沢りえのコメディエンヌの才能が見事マッチして、侮れない作品になりました。
最初は、有美が空気を読めず、言動が的外れなことを失笑し、トラブル処理に追われる谷村達秘書に同情する部分もありました。しかし、有美は部外者で自分の気持ちに正直だからこそ、今の政治システムのおかしさに納得できなくなります。贈収賄など違法なこととわかってもシステムができあがっています。谷村も薄々おかしいなと思いつつ、決まっているからと無理に有美を従わせようとします。これって、大手企業の不正検査隠しや森友学園問題での財務官僚など日本中の大きなシステムで同じように起きていて、当事者は決して悪人でないのに、システムで決まっているからと悪事に手を染めてしまう。その怖ろしさを見事にあぶりだしています。
谷村をはじめ、事務所長の濱口(小市慢太郎)、唯一の女性秘書の田中(内田慈)、ベテラン秘書の向井(音尾琢真)、秘書なりたての新人の岩渕(赤楚衛二)まで、秘書たちは個人としては善人で、どこにでもいる人たちです。そういう人たちが、顔色一つ変えず、それどころかまじめに働く証として悪事に手を染めているというのが怖い。本来、権力を監視するべきのマスコミですらそこに入っているのです。一番怖かったのが、すべてを暴露するという有美に、谷村が丁寧に淡々といくらそんなことをしても無駄だと説得するシーン。現実の日本でもこれと同じようなことがいくつも起きているのだろうとぞっとしました。
一方、堅苦しい話にさせずに有美が突撃ユーチューバーに怒ってどつき合いの喧嘩になるなど笑わせる場面もあります。韓国への差別的発言や女性は子供を産まないと意味がないなど、現実の政治家から出たような発言をするなど、風刺もばっちりきいています。それでいて、例えば「新聞記者」のような党派性丸出しの作品とは一線を画しています。それでもスキャンダルよりも、2世の美人というほうが票になるというのが今の日本で、そちらのほうがモリカケ問題よりはるかにまずいと思わされました。
ファッションも含めてとにかく宮沢に圧倒されますが、それに受ける普通の人間代表を演じている窪田も、表情、仕草を含めて若手実力派のすごみを感じさせます。秘書たちの演技もいいですが、脇役の後援会幹部や地方議員のおっさんたちの、いかにも本当にいそうなドロドロした存在感と巧さが、本作を見事に完成させています。政治に関心がある人もない人もみてもらいたい作品でした。
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