作品情報 2019年フランス、イタリア映画アニメ 監督:ロレンツォ・マトッティ 声の出演:レイラ・ベクティ、トマ・ビデガン、ジャン=クロード・カリエール 上映時間:82分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2022年劇場鑑賞18本
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【ストーリー】
国中を回る旅芸人のジュデオン(声・トマ・ビデガン)と助手の少女アルメリーナ(レイラ・ベクティ)は冬山の洞窟で一夜を過ごそうとしたところ、大きなクマが現れる。食べられては大変と思った2人はシチリアに古くから伝わる「クマ王国の物語」を語りだす。
大昔、クマの王様レオンス(ティエリー・アンシス)は遊んでいた子熊のトニオ(アルチュール・デュポン)が川に流されてしまい行方不明になったことにショックを受ける。何もできなくなったレオンスに、長老クマのテオフィル(ベッペ・キエリーチ)は、下流の人間の国に捕らえられているかもしれないという。レオンスは部下たちを引き連れてトニオを探しに行くが、人間の国を収める残虐な大公(パスカル・デモロン)は、近づいてくるクマたちを皆殺しにしようと企む。それを知った魔法使いのアンブロジス(ボリス・リハインゲール)は大公にいじめられていることもあって、クマたちの味方になろうとしたのだが…
【感想】
童話ということで、話は分かりやすい反面、キャラクターの行動がよくわからないところもあります。例えばアンプロジスの前半での行動は迷走します。もっとも、単純ではいかないことが人間なのでしょうが。一方、クマたちの心理は明快です。
クマたちは実は異民族の寓話であるといわれています。友好的に接しようとしてもすぐに戦争に持ち込もうとする支配者。そして、クマたちも人間の悪意にそまっていくものや、クマとしての本能を失っていくものもでてきます。これもまた、異なる民族、異文化によってもたらされた弊害を意味しているとのことで、70年以上前に原作が作られたのに、今の社会にも通じる風刺になっています。
上映時間が短いにもかかわらず、ストーリーは2段構えになっていて、タイトル通り人間の王国を征服したクマたちが、権力や富によって次第に汚されていくようすは、権力や富の怖さをしっかり伝えてくれます。そして、そのむなしさも。純粋なクマですら堕落するのですから、いわんや人間もという寓話は、敗戦当時のイタリアだけでなく、現在の社会にも通用しますね。
ただ、そんな難しいことを考えなくても、ヨーロッパのアニメ独特のセンスにあふれる色彩と、輪郭を描かないかわいい動き、人をくったようなユーモアはゆったりと癒されます。ストーリーもトニオやアルメリーナをはじめとする若いキャラクターたちの活躍をしだいに応援したくなっていきます。時間の関係で字幕版を見ましたが、吹き替え版のキャストが伊藤沙莉、柄本佑をはじめ魅力的なので、吹き替え版をみたかったなあ。
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