作品情報 2021年日本映画 監督:Koji Uehara 出演:守山龍之介、畦田ひとみ、白磯大知 上映時間:115分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:横浜シネマリン 2022年劇場鑑賞54本
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【ストーリー】
アラサーになっても売れないミュージシャンの公平(守山龍之介)はレストランでバイトしながら、バンド活動に打ち込む。だが、バンド仲間ですら公平の才能は買うものの、先行きに不安を抱えていた。気弱で優しい彼を恋人の珠江(畦田ひとみ)はしっかり支える。
バンドにレーベルから契約の話がきて、レコーディングやプロモーション費用に100万円かかることになった。珠江や親からも借金して100万円あつめた公平だが、バンド仲間の洋一(板垣雄大)が持ち逃げしてしまう。彼は、街の半グレ大崎(末松暢茂)のカジノでトラブルを起こし、300万円の借金を抱えていたのだ。さらに大崎は公平の幼馴染で、不良のリーダー竜彦(白磯大知)と対立していて…
【感想】
気弱で優しいだけでは長所にならず、妙な正義感が発動してトラブルを巻き起こすことになる。どんどんドツボにはまっていく公平を観ていると、イライラする半面、そんな彼を窮地に追い込む周囲によけい腹が立っていきます。珠江や竜彦が公平を見捨てられないのも、彼の生き方下手と優しさに惹かれる部分があるからでしょう。でも、社会はそんなに甘くありません。
公平の欠点を分かったうえに才能にほれ込む珠江は理想の彼女。でも、ぬるま湯のような人間関係や、将来の不安を打ち消すがゆえにモラトリアムになっている公平ははっきりとした行動ができません。僕なんかも似たところがあるだけに、こんな理想の彼女と巧く向き合えない公平が何とももったいなく感じました。竜彦も同様で、彼の支援がうざったくなるのもわかるけど、妙なプライドが生き方を下手にしているなとみていて思います。
バンド活動もぬるま湯で、公平は無意識に自分の責任だと感じているけれど、抜本的に直すと今の生活を壊してしまうからすすめません。珠江との関係も同様。虹が落ちる前にというのは印象的な表現ですが、夢にむかってまっしぐらに行ける人間はごく少数派。やがて夢をもっていたことすら日常や惰性にすりかわっていきます。そんなあせりを想起させられました。
Koji Ueharaの初長編映画でノースター低予算のいかにもインディーズ映画という感じ。
それを含めて、巧すぎる大手映画とは違った楽しみが味わえるのですよね。ロケ地は大阪なのに言葉は標準語だったり、登場人物がクン付けで呼び合うのはこだわりでしょうか。ただ、監督はMV畑出身なので、やはり、公平の歌声をガンガン聞かせるようなステージを観たかった気がします。
公式サイトは脇役のキャストまで丁寧に紹介されていて好感がもてます。守山は俳優ですが、ミュージシャンを公平にあてていたらまた違ったふうでみたかったかなあ。でも、畦田のナチュラルな存在感とはぴったり。ラストの2人の表情は、やはり役者ならではの良さがありました。脇役のなかではライブの売り子役の早坂風海に目が行きました。
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