2022年05月01日

ハッチング〜孵化

 北欧の美しい自然と完璧な家族、きれいなBGMが不気味さを誘うホラー。モンスターよりも人間、それも家族の怖ろしさを感じさせる秀作です。

 作品情報 2022年フィンランド映画 監督:ハンナ・ベルイホルム 出演:ニマ・ユーセフィ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ヴォラネン  上映時間:89分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:丸の内TOEI  2022年劇場鑑賞89本 



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 【ストーリー】
 フィンランドの郊外に暮らす12歳のティンヤ(ニマ・ユーセフィ)は美しい母(ソフィア・ヘイッキラ)、優しい父(ヤニ・ヴォラネン)、幼い弟と暮らしていた。裕福で家もピカピカ。母は幸せな一家の様子をSNSにアップするなか、ティンヤは体操クラブの試合に向け、猛練習をしていた。

 ある日、黒い鳥が家の中に迷い込み、ガラスの食器などを破壊する。母は鳥を殺して外のゴミバケツに捨てるが、鳥は生きていた。森の中で苦しむ鳥を見つけたティンヤは近くの巣にあった卵を持ち帰り、育ててみる。ところがその卵はどんどん巨大化し、ティンヤの体ぐらいになる。そしてその中から、思いもよらぬものが産まれてきて…

 【感想】
 家族ってなんだろうと思ってしまいました。はたから見れば完璧な家族に美しい家。幸せでいっぱいなわけですけど、ティンヤは完璧さを求める母親に対して息苦しさを感じます。父親も母親には妙に遠慮していて本音を隠したまま。さらに、SNSに執拗に幸せな写真をアップしようとする母親は、幸せへの強迫観念にかられようとしています。本作では極端に戯画化されていますが、家族はしょせん他人のあつまり。そこから抜け出せないと、息苦しいままです。

 卵から「それ」が産まれるのは意外に早い段階。「それ」はティンヤを母のように思い、ティンヤは家族からも隠します。そして、押し殺したティンヤの本音を体現するような行動はどんどん危険な方向へ向かいます。日本と違うと思ったのは、子ども部屋から不審な物音がしても、大人が気付かないこと。家が広いこともあるけれど、12歳でも自立しているから、そんなに面倒をみないということでしょうか。

 やがて、母はテロ(レイノ・ノルディン)という男と不倫をはじめ、目撃したティンヤを共犯者にしようとします。このへんは、いかに性に自由なイメージがある北欧でも、あきらかにやりすぎ。母親は自分の欲望ばかりで、ティンヤの気持ちはまったくわかろうとしないですし、父親も不倫に気付いていながら止めようとせず、困惑するティンヤに向き合おうともしない。むしろ、本来だったら他人のテロが一番ティンヤのことを気に掛けるというのが何とも不思議。

 女流監督ということもあり、ティンヤ、母、「それ」は目立つものの、テロや父親、弟は役立たず。男がいかに緊急時に無能かつきつけられたような感じも。また、ティンヤが体操する姿は意識的か性的イメージを想起させるようなとりかたもあり、これもえげつなく感じました。

 「ミッド・サマー」のように、日中でも不穏な北欧の国々。ラストは人によって解釈はことなるでしょうけど、これ以上不幸はないハッピーエンドだというのが僕の感想です。こういうホラーは正直好み。

posted by 映画好きパパ at 06:11 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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