2022年05月05日

ブルー・バイユー

 アメリカの移民政策、人種問題の暗部を感じさせる秀作。予告編から想像の通りで、家族が公権力に引き裂かれるのはなんとも哀しい。日本でも入管政策に批判が集まっていますし、他人事ではありません。

 作品情報 2021年アメリカ映画 監督:ジャスティン・チョン 出演:ジャスティン・チョン、アリシア・ヴィカンダー、シドニー・コワルスキ  上映時間:118分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:厚木の映画館KIKI  2022年劇場鑑賞92本



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 【ストーリー】
 韓国生まれのアントニオ(ジャスティン・チョン)は幼いころに養子としてアメリカにやってきた。今はニューオリンズでタトゥーショップを経営しながら、恋人のキャシー(アリシア・ヴィカンダー)と幼い連れ子のジェシー(シドニー・コワルスキ)と暮らしている。

 キャシーが警官で元夫のエース(マーク・オブライエン)に付きまとわれていて、止めようとしたアントニオは逮捕されてしまう。さらに、幼いころに里親がきちんと手続きをしていなかったため、市民権を持っていないことが判明。国外追放処分が決定してしまう。キャシーは何とかして処分を取り消そうと必死になるのだが…

 【感想】
 エンディングロールで実際に国外追放処分になった外国人の養子が何人も紹介されていて、数万人規模で不法滞在になっているというのにまずびっくりです。アメリカ人がアジアをはじめ貧しい有色人種を養子にとるという話はよくききますが、こんな法的問題が存在しているとはしりませんでした。

 アントニオは若いころにはやんちゃをして、今も大きなタトゥーを彫っています。アジア系ということもあり、キャシーたちときちんと暮らそうと職探しをしてもまともな仕事はなかなかみつかりません。さらに、エースたち白人警官からいちゃもんをつけられたうえ、逮捕までされてしまう。黒人が不当な扱いを受けている映画は多くありますが、同じ有色人種でもアジア系が差別されている作品はあまり思い当たりません。現実にコロナ禍のアメリカではアジア系というだけで襲われた例もあり、実情は深刻なんでしょう。

 そんなアントニオを必死で支えるキャシーを名優、アリシア・ヴィカンダーが好演していますが、なんといっても幼い子役のジェシーがたまりません。継父のアントニオのほうに実父のエースよりも懐いています。仕事に忙しいキャシーが、ジェシーとぎすぎすしたときにはアントニオがさっと間にはいることもあり、本当の父と娘のように懐いています。しかし、これほど深い関係でも法の前では無力なわけです。

 もう一つ、ベトナム難民の女性、パーカー(リン・ダン・ファン)と一家との出会いも物語を重層的なものにしています。故郷とは何なのか、パーカー一家が全滅しないように、脱出の際、別々の船にのったという話は重い。それだけに、自由の天地だったはずのアメリカが、実際にはそうでもないという映画の指摘は考えさせられます。

 ジャスティン・チョンの演出は今一つこなれないところもありますが、テーマの着目点はみごとなもの。彼はアップルテレビで在日韓国人を描いた「Pachinko パチンコ」を監督して話題になっています。こちらはアップルテレビ独占で僕は見られないのだけど、「ブルー・バイユー」をみれば、こうしたセンシティブな問題をうまくさばける監督なのだろうと納得しました。
posted by 映画好きパパ at 07:33 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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