作品情報 2019年イギリス映画 監督:ショーン・ダーキン 出演:ジュード・ロウ、キャリー・クーン、チャーリー・ショットウェル 上映時間:107分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2022年劇場鑑賞101本
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【ストーリー】
1986年、ニューヨークで貿易商を営む英国人のローリー・オハラ(ジュード・ロウ)は、これからはロンドンが投資の中心になると、昔在籍したロンドンの大手企業に部長に転職する。アメリカ人の妻アリソン(キャリー・クーン)、高校生の娘サマンサ(ウーナ・ローシュ)、小学生の息子ベンジャミン(チャーリー・ショットウェル)とともに、ロンドン郊外の豪邸に引っ越す。
そこは庭にサッカー場があり、アリソンの趣味の乗馬もできる豪壮な邸宅だった。出社したローリーは元上司のアーサー(マイケル・カルキン)に意欲的なプロジェクトを次々と提案する。しかし、一家の生活はだんだん…
【感想】
足るを知らないといくらお金があっても足らない。そんな当たり前のことを分からない人が世の中には大勢います。特にアングロサクソンのように格差が激しい国では当たり前。ローリーはニューヨークが長かったし、貧しい産まれということもあって、とりわけ目に見える屋敷やファッション、車などに固執していました。
しかし、それは富の本質がわかっていないこと。ローリーのアメリカ流のはったりビジネスは、ロンドンでは静かにかつ丁重に無視されていきます。それがわからずにひたすら空回りで仕事にまい進する彼が痛い。一昔前のジャパニーズビジネスマンもこんな感じなんだろうなと思ってしまいました。
家族の世話をしなくても高級なモノさえ与えておけば幸せなはず。そう思うローリーの贅沢に最初は家族3人とも自分たちも幸せな気分になれます。しかし、現実はそんなに甘くない。ローリーはNYでは優しいパパだったのですが、ロンドンで仕事が忙しくなると家族と向き合おうとしないし、アリソンも家計のこと、将来の夢のことなどローリーと話し合うことすらできない。まさに虚飾にまみれた家族です。
また、舞台が1986年というのも絶妙です。レーガノミクス、サッチャーの自由主義によって、資本主義がむき出しの欲望に変わり始めたころ。ローリーは自分がその波にのっていると勘違いしたのですが、結局のところ、富めるもの、一流の生まれに庶民が真似しようと思っても無駄だったわけです。この何ともむなしい気持ちは今の日本にも通じるかもしれません。
すっかり中年になったジュード・ロウはこうした虚飾の演技ができるいい役者。相手役のキャリー・クーンや子役2人も自分の役割をきっちり果たしており、上質な演技は感心しますが、全体的にスローテンポなので、こうした題材があわないひとは苦手かも。美術、ファッション、音楽は80年代イギリスという感じを堪能できました。
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