作品情報 2020年アメリカ映画 監督:ジュリー・テイモア 出演:ジュリアン・ムーア、アリシア・ヴィカンダー、ティモシー・ハットン 上映時間:143分 評価★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2022年劇場鑑賞113本
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【ストーリー】
旅することが最大の教育だという父(ティモシー・ハットン)の教えで、一カ所に定住しないで全米を転々とする幼少期を過ごしたグロリア・スタイネム(アリシア・ヴィカンダー)は、念願のジャーナリストになる。だが、社会問題は取材させてもらえず、恋愛やファッションなど女性向けとされるものの取材ばかり押し付けられた。
周囲の無理解やセクハラに負けず、著名なジャーナリストとなった壮年期のグロリア(ジュリアン・ムーア)は女性解放を打ちだした雑誌「Ms.」を創刊。精力的に女性解放運動にまい進していく。
【感想】
現在、アメリカでは最高裁が中絶の合憲性を見直す判決を出す予定だと報じられ大騒ぎになっています。本作はそんなことになる前に完成していますから、グロリアたちの活躍で中絶が女性の権利として認められたことをたからかにうたいあげていますが、それから50年もたっても論争が片付かないどころか、後退しているのにはびっくりです。日本のフェミニストも萌え絵なんかで騒いでいるより、こうした現実に抗議をするべきだと思うのですが、まったく盛り上がってませんね。
それはさておき、映画はグロリアを幼少期からジュリアン・ムーア演じる壮年期まで4人の女優が演じ分けます。グロリアの脳内でその4人が一堂に会するシーンが何度かあって、それは演出として面白いのですが、問題は特に前半部分、それぞれの時代がいきなりスイッチしてしまうことです。女優をみれば年代の違いは分かるのだけど、唐突な場面転換が相次ぐため、集中力がそがれてしまいます。
また、グロリアがどういう環境で育ち、家族との関係や女性差別の当時の状況はどうだったのかを丁寧に描いた前半は面白かった。学生時代、留学先のインドでひどい目に会う女性たちを目の当たりにしたこと、そして、アメリカでも職場で普通に行われるセクハラの数々は男の僕から見てもうんざり。また、ユニークな父親をはじめ、うまくいきそうでいかない家族関係を描いた部分も関心をひきつけました。
しかし、後半は完全にアメリカの女性解放運動史になってしまって、せっかくジュリアン・ムーアが演じているのにグロリアの人間性の深掘りがなくなってしまったのも今一つでした。
アメリカの女性解放運動に詳しくなければグロリア以外の登場人物が何者で、どういう点で路線対立が起きているのかもさっぱりわかりません。さらにグロリアの結婚をはじめ、前半生はあれだけ丹念に描いたのに、後半はすっ飛ばしの連続。その割に上映時間が長いので編集の工夫もみたかったなと思いました。とまれ、グロリアのことは知らなかったので、勉強にはなりましたが。
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