作品情報 2022年日本映画 監督:中村裕 上映時間:96分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2022年劇場鑑賞125本
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【ストーリー、感想】
売れっ子の女流作家として不倫を繰り返した後、50代で僧侶になった後は人生相談などで根強いファンを得た瀬戸内寂聴。NHKスペシャルで取材したのをきっかけに講師とも仲良くなった中村裕監督は、2人で寂聴の家で年越しするなど、公私ともに親密な関係になりました。寂聴は気取らない中村監督を気に入り、臨終の際にはカメラを病室で回してほしいと依頼するほど(さすがにそれはできませんでしたが)。親友の前に素をみせる寂聴は何ともチャーミングです。
90歳をすぎてもすっぽん料理やステーキが大好物。震災被災地どころか海外まで足を延ばし、悩める衆生に暖かくアドバイスする。そうした、彼女の姿は生き方の理想と言えましょう。前半生のスキャンダラスな人生を出家で一変し、自分の愛多き経験とずばずばした発言はマスコミでも大きく取り上げられました。飄々とした笑顔はチャーミング。
ただ、僕は彼女の「人は愛するために生きる」「恋に落ちるときは雷にうたれたようで、理性にはどうにもならない」といったような名言は、自分にはまったくあてはまらず、モテて裕福な女性の建前にしか思えませんでした。夫を亡くした女性へ、「亡くなった人の魂はあなたのそばで見守っている」というアドバイスもいかにも宗教家っぽく、冷やかにみてしまいます。
そんな彼女が90代後半になり、死や老化による衰えが怖いと泣いてしまうところが僕にとっての最大の見所でした。人間、いかに恵まれていてもだれもが死んでしまいます。宗教、思想などで理論武装しても、その前ではちっぽけな存在でしかないことを知らしめてくれる。そして、自分よりも40歳近い年下の友人がよりどころになる。これこそが、死を間近にしてはじめて感じた理想の生活では、と思ってしまいます。正直、最初は観るつもりがなかったのですが、別の映画と時間帯を勘違いしてやむを得ずみました。でも、観られてよかったというのが実感です。
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