2022年06月16日

夜を走る

 現代日本の下層社会をリアルに描いた前半から、ある事件を機に後半が何とも面妖な展開になっていきます。意表をついた構成を評価する声もあるけど、個人的にはちょっと合わなかったかな。

 作品情報 2021年日本映画 監督:佐向大 出演:足立智充、玉置玲央、菜葉菜 上映時間:125分 評価★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ  2022年劇場鑑賞139本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【ストーリー】
 郊外の鉄屑工場で働く秋本(足立智充)は真面目だが要領が悪く、いつも上司の本郷(高橋努)からパワハラを受けていた。ある日、同僚の谷口(玉置玲央)と飲みに行った先で、本郷が会社に営業に来た新人セールスウーマンの橋本(玉井らん)を飲ませ、セクハラまがいの行動をとっているのを目撃する。

 酔っぱらった橋本を介抱して2次会につれていった秋本と谷口。だが、その晩、橋本が失踪する。そして、平穏だった日常が一気に崩れていき…

 【感想】
 前半は中小の鉄くず工場という安月給でパワハラを受けながら秋本を淡々と映しています。恋人もおらず仕事もできない秋本に、後輩の谷口は同情気味。しかし、谷口も妻(菜葉菜)との関係もうまくいっておらず、安月給や嫌な上司は変わらないわけですから、若いながらも閉塞感が漂っています。リアルな下層社会をみせてくれるのかと思いきや、事件の発生で物語は一気に疾走します。

 失踪に何があったのか、映画では一応みせていますが、ラストでがらっと違ったふうにみせている信頼のおけない語り手問題の作品。しかも、後半は怪しげな宗教家、美濃俣有孔(宇野祥平)の登場もあり、あれ?あれ?と思う間に話が展開していきます。このへんの作り方は巧いと思ったけど、凝りすぎている気もしました。

 前半は社会構造の問題を背景に、どうにもならない日常を丹念に描いているのだけど、後半は飛び道具を使ったおかげで、いっきにお話っぽくなっちゃった感じがしました。佐向監督と「教誨師」でタッグを組んだ故大杉蓮が制作に加わるはずで、実際には妻の大杉弘美が制作にはいっていますけど、もし蓮さんが生きていたらどういう作品になったのかも気になります。

 秋本の弱者ゆえに薄ら笑いで対応するしかない張り付いた笑顔が、美濃俣の新興宗教に入信して、怖さすらおぼえるような意思のない笑顔にかわっていくというのは、足立のように印象の薄い顔立ちだからこそ、だれにでも起こりえるようでうすら寒かった。また、宇野がとにかく存在感をだしまくりで、こういうカリスマ的人物の役もできるのかと感心しました。女装のバスジャック犯役よりも印象的でした。このほか、玉置、玉井、菜葉菜といった脇役もキャラクターがよく掘り下げてあったのもいい。反対に新興宗教パートの登場人物が、宇野以外は類型的というのが残念でした。
posted by 映画好きパパ at 06:07 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。