作品情報 2018年ドイツ、ウクライナ、フランス、オランダ、ルーマニア、ポーランド映画 監督:セルゲイ・ロズニツァ 出演:タマラ・ヤツェンコ、リュドミラ・スモロディーナ、オレーシャ・ズラコフスカヤ 上映時間:121分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2022年劇場鑑賞141本
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【ストーリー】
2014年にウクライナから独立を宣言して親ロシア勢力が支配しているドンバスなどウクライナ東部。フェイクニュースやプロパガンダを巧みに駆使する近代的な情報戦と、前時代的で野蛮なテロ行為が横行するドンバスのハイブリッド戦争を13のエピソードで描いた。
【感想】
日常と紛争が同一化されたドンバス。フェイクニュース制作のためエキストラを集めたニュース作り、警察がやってきた市民を人質にとって身代金を請求、ウクライナ人捕虜への市民の狂ったような扱い。どれも10分程度のエピソードですが、ウクライナで何が起きているのか実話をもとに制作されたそう。まあ、フェイクニュース制作をめぐるラストのシークエンスはさすがに信じられませんが。
ロシアがいかにフェイクニュースとプロバガンダを重視しているかは、今、まさに侵攻中のウクライナ侵略でもみせつけてます。日本でもそれをうのみにしちゃう元総理大臣をはじめ政治家、大学教授なんかがいるわけだから、現地の住民にしたらそれを信じちゃうのは当たり前です。
一方で、ロシア軍、親ロシア勢力の残虐さ、風紀の悪さは歴史的にずっと続いています。それを糾弾するのではなく、ユーモアたっぷりに撮るというのは底意地が悪い。まあ、ニューオーダーみたいに悲惨な現実をより悲惨に移すよりは、本作のほうがセンスがよいかも。そもそも、いったいどこでどうやって撮影したのか、反ロシアの作風なのにこの作品で、ロズニツァ監督(ベラルーシ生まれのウクライナ育ち)がウクライナ映画界から追放されるなど現実の方も不思議にすら思えます。
ただ、13のエピソードはバラバラで、何を意味しているのかわかりにくいエピソードもあります。だから、ウクライナ情勢に関心がない人がみても退屈かもしれません。しかし、それでも現代の戦争の裏にはどんなことが起きているのかを知る貴重な教材です。こういう時代だからこそ観るべき作品といえましょう。
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