作品情報 2021年イギリス映画 監督:ギリーズ・マッキノン 出演:ティモシー・スポール、フィリス・ローガン、ナタリー・ミットソン 上映時間:86分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2022年劇場鑑賞143本
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【ストーリー】
イギリス最北端の農村ジョン・オ・グローツに住むトム(ティモシー・スポール)はもともと最南端の町ランズ・エンドに住んでいた。妻のメアリー(フィリス・ローガン)に先立たれて独り暮らしになったトムは、生前、妻との果たせなかった約束をかなえるため、バスに乗ってイギリス縦断の旅に出る。
荷物を盗まれたり、バスが事故に遭うトラブルの一方、途中で出会った見知らぬ人たちが旅の手助けをしてくれた。重病で余命いくばくもないトムはひたすら旅を進めていくのだが…
【感想】
イギリスの地理や風土に詳しい人はとても楽しめるだろうなあ。そう思わせるほど巧いロードムービーです。イングランド人のスコットランド人への小ばかにした態度や、偶然にもウクライナコミュニティに助けられるなど移民が社会に根付いていることを明かす場面。そもそも、孤独な独り暮らしというのは大きな社会問題になっているわけです。
若い人なら普通にできることも、90歳にとっては命がけの大冒険。それでも前へ進もうとして、小さい子供から老人まで、いいことも悪いことも含めて出会ったさまざまな思い出を人生の最晩年に作っていくとはなんて豊かな老後なんでしょうと嘆息します。カネや権力に無縁な人生でも、最後に幸せを得られれば満足でしょう。
老人がバスでイギリスを縦断している話はSNSで話題となるというのは現代的ですが、興味深かったのが、リアルでも乗客同士が気軽に話し合ったりしていること。老人だから警戒されないということもあるのでしょうが、今の日本で道端に倒れている老人を助けてわざわざ食事や寝泊りさせてあげるなんてまず考えられない。治安の悪さも映画では示していますが、人情はイギリスのほうがのこっているように感じました。
バスに乗りながらメアリーの最晩年や、出会ったばかりの50年以上昔を回想するトム。この入れ子のような構造も映画に深みを与えてくれます。今はよれよれの老人でも、若いころには激しい恋愛をして、そして死ぬようにつらい思いをしても生きている。まさに人生の重みをかんじさせます。押しつけがましくなく、引いたようにとる演出も、イギリス各地の寂寥たる自然とマッチして心地よい。
ティモシー・スポールは特殊メイク無しで実年齢より30歳近い老人になりきりました。仕草とか完全に90歳にしかみえず、さすが名優です。
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