2022年06月22日

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 アフガン難民の青年の苦悩を描いたアニメーション。実際の難民の話を基に、時折、ニュース映像などが実写で挟まるのが効果的です。アカデミー賞では国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー映画賞、長編アニメ映画賞にノミネートされる快挙となりました。

 作品情報 2021年デンマーク、フランス、ノルウェー、スウェーデン映画アニメ、ドキュメンタリー 監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン 声の出演:アミン・ナワビ、ベラル・ファイズ、ザーラ・メールワルツ 上映時間:89分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:バルト9  2022年劇場鑑賞146本



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 【ストーリー】
 アフガンで幼少期に家族を殺されて、天涯孤独でデンマークに亡命した少年アミン(アミン・ナワビ)。だが、実は母や兄は生きていたが亡命のためにやむを得ず嘘をついていた。やがて大人となり研究者として成功した彼は、同性婚を前に過去のことを親友の映画監督(ヨナス・ポヘール・ラスムセン)に話し始める。

 【感想】
 アミンは仮名だそうですが、彼の実話を基にしているのでドキュメンタリー映画となっています。アニメによって、従来ではできなかったような表現も含め、ドキュメンタリー映画の幅がどんどん広がっているのは驚きます。

 幼少期のアミンはa-haを始めとするロックが大好きな普通の少年でした。部屋にはチャック・ノリスの映画のポスターも飾られ、ジャン・クロード=ヴァンダムのファンだったといいます。1980年代のアフガニスタンは、実は同時期の日本と文化的にはたいして違いが無かったのです。しかし、政治的には厳しく、父親は逮捕されました。さらに、タリバンが全土を支配するようになると西洋音楽を聞いていると反イスラムで処刑されてしまいます。アミンは母、兄、姉とロシアに脱出します。

 ロシアが共産党政権崩壊直後で無秩序だったのが幸いしたといえます。警官も腐敗しきっていて、不法滞在で捕まりそうになっても賄賂でごまかせました。しかし、賄賂が払えなければ悲惨な運命が待っています。モスクワにマクドナルドがオープンしたという華やかなニュースの横で、不法滞在の難民が警官にひどい目にあわされていたことが描かれています。アフガンでもロシアでも暴力装置である国家に、力ない庶民は押し付けられるばかりです。

 ロシアから北欧に密告しようとブローカーに高い金を払います。しかし、ブローカーは難民の命など屁とも思っていません。高い金を巻き上げたうえ、命を危険にさらしながら狭い船にアミンは押し込められます。たまたまノルウェー船に発見されますが、ノルウェーの観光客たちがカメラで面白がって死にかけた難民たちをパシャパシャ撮っている姿は何ともおぞましい。もちろん、悪徳警官やブローカーが最悪ですけれど、自分たちは幸福なのに他人の不幸をエンタメとしてしか消費せず、さらにいえば今起きている難民問題すら拒絶する姿は、僕も含めて先進国一般にあるわけで、つらくなりました。アミンの成長後のエピソードに恋人の男性から過去を脅されたことがあります。自分がたまたま先進国に産まれただけなのに、相手の不運を相手の責任だと踏みにじるのは本当に嫌悪してしまいます。

 もう一つ、アミンは同性愛者であり、イスラムでは許されないことです。家族に打ち明けることもできず、思春期に国からも家族からも疎外されるというのはなんと哀しいことか。幸いにも今は研究者として成功しているそうですけどものすごい幸運なことで、アフガンなど世界の各地で、アミンのような少年が命を落としている現実があると思うと、やはり暗澹たる思いに陥ってしまいます。

 それにしても、日本に産まれたというだけで本当にラッキーだと思います。最近はそのことを幸運とは思わず不平ばかり言う人もいますが、世界で何が起きているのかちゃんと知ってほしい。少しでも世の中を良くするために自分ができることをしなければという気に駆られました。
posted by 映画好きパパ at 05:54 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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