作品情報 2022年日本映画 監督:五十嵐匠 出演:萩原聖人、村上淳、吉岡里帆 上映時間:130分 評価★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2022年劇場鑑賞196本
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【ストーリー】
太平洋戦争末期、米軍はいよいよ沖縄に上陸しようとするなか、新しい知事、島田叡(萩原聖人)が着任した。100%死ぬと言われ、前任者(勝矢)が逃げ出した仕事だが、責任感の強い島田は部下の警察部長、荒井退造(村上淳)とともに、女性や子ども、年寄りを中心とした県民を少しでも守ろうと必死だった。
だが、沖縄在留第32軍司令官の牛島中将(榎木孝明)は県民総動員のゲリラ戦を決意。民間人の犠牲をできるだけ避けたい島田と意見が割れる。県庁の知事付職員、比嘉凛(吉岡里帆)は家族を空襲で無くし、玉砕覚悟で米兵を倒そうと必死だった。そんな彼女からすると島田は頼りなくみえたのだが…
【感想】
対馬丸の沈没から牛島中将の自決まで1年近くにわたる沖縄戦の全体が分かる仕組みになっています。当時の記録映像が効果的。ガマ(壕)に逃げ込んだ住民を日本兵が射殺するなどの描写がありますが、基本的に牛島ら日本軍もフラットな感じで描いています。ひめゆり学徒で凛の妹ゆき(池間夏海)らと傷病兵の交流は、やはり涙なくしてはみられない感動ポイントです。
ただ、全般的にいかにも邦画的な安っぽさ。CGについては予算の面からやむを得ないにしても、低予算で戦争の悲劇を描いた塚本晋也監督の「野火」と比べると、戦闘シーンはもとより洞窟のセットまで迫力にかけます。さらに、いかにも感動的なBGMを流したり、主要登場人物がさんざんと自分語りをしたあと、ガクっと逝ってしまったりと、今更こういう演出ではチープなのではと会いませんでした。エピローグに現代の平和な沖縄をもってくるのも今さら感。沖縄の新聞社2社がスポンサーのためか、戦時下の新聞編集部もところどころ入ってますが、本筋と違うためにテンポがずれます。
とはいえ、戦後80年近くたって風化されそうな沖縄戦をきっちりと映画で描く意図は素晴らしいもの。個人的には
俳優陣のなかでは吉岡里帆が特筆すべき演技を見せてくれました。家族を失ったこともあり、軍国主義に凝り固まり玉砕を当然と思い切る静かな狂気は、今までの彼女のイメージを一新させます。国家の刷り込みの怖ろしさは時代が変わっても同じなわけで、それを目つきや仕草も含めて表していた彼女には拍手を送りたいほどでした。また、主要登場人物の中では池間夏海が沖縄出身であり、若い彼女がどう思ったのか知りたいのだけど、インタビュー記事とかみあたらないのが残念でした。
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