2022年08月10日

アウシュビッツのチャンピオン

 毎年、夏になるとユダヤ人虐殺を取り上げた映画が日本でも上映されます。本作はポーランド映画ということですが、興味深かったのがナチ将校の家族も登場したこと。人間が立場によってどう変わるか、いろいろ考えさせられました。

 作品情報 2020年ポーランド映画 監督:マチェイ・バルチェフスキ 出演:ピョートル・グウォヴァツキ、ヤン・シドウォフスキ、グジェゴシュ・マウェツキ 上映時間:91分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館  2022年劇場鑑賞202本



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 【ストーリー】
 1940年、開設したアウシュビッツ収容所に最初に移送された囚人の中に番号77番、テディ(ピョートル・グウォヴァツキ)がいた。彼は戦前はボクシングのワルシャワチャンピオンだった。囚人は次々と殺されていったが、収容所幹部の娯楽としてテディは看守らを相手にボクシングを命じられる。

 勝てば食料をもらえ、テディは収容所で自分の子どものように可愛がっていた体の弱い少年ヤネック(ヤン・シドウォフスキ)らに分け与えていた。だが、連戦連勝のテディが囚人たちの希望になるのを恐れた収容所幹部はある策略を練って…

 【感想】
 映画の後で調べるまで知らなかったのですが、テディはユダヤ人でなくポーランド軍の兵士だったそう。そんな人もアウシュビッツに入れられていたのかというのは驚きました。ユダヤ人同様、収容所幹部の気まぐれで殺されていきます。テディはボクシングというサバイバルのための手段があったわけですけど、ナチス兵が人間の仕業とは思えないような残虐行為を行っているのを目の前で見るわけですから、生き残っても地獄といえましょう。

 そうしたなか、収容所幹部(グジェゴシュ・マウェツキ)は家族を連れてポーランドに赴任しています。「縞模様のパジャマの少年」でも同様のシーンがありましたが、後方部隊だからということでしょうか。この幹部が家庭では心優しい父親で、収容所では平然と囚人を殺す姿をみると、本当に人間は立場によってまったく変わってしまう恐ろしさを感じます。幹部にはまだ幼い息子がいましたが、テディの試合を見てボクシングにあこがれるというシーンも挟んでおり、小さな子供のころは純真だったのに、どこで歪んでしまうのかというのも考えさせられました。

 テディが連戦連勝し、ヤネックにボクシングを教えたり、食べ物だけでなく不足している医薬品をこっそりもらって囚人の治療にわける姿はテンポ良くモンタージュのように描かれます。ただ、こうした地獄のなかでも平穏な日々はあっという間。収容所の看護師がものすごい美人で、ヤネックの初恋の人になるという人間らしいエピソードも、ナチスの前には無残に踏みつぶされていきます。

ボクシングシーンは非常にごつごつしたもので、本当に収容所で行われていたようなリアルさが伝わってきます。ピョートル・グウォヴァツキのダニエル・クレイグに似たようなおっさんだけどギラギラした眼が、テディ役にはまってました。ポーランド映画でハリウッドのような予算はかけられない分、切迫感が感じられたといえましょう。正直、ホロコースト映画はみるのは精神的にしんどいですが、人間とは何かを考えるうえでもこの先も作られてほしいと思います。

posted by 映画好きパパ at 06:01 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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