作品情報 2021年タイ映画 監督:バズ・プーンピリヤ 出演:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン 上映時間:128分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2022年劇場鑑賞208本
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【ストーリー】
ニューヨークでバーを経営するボス(トー・タナポップ)は、かつて喧嘩別れした親友のウード(アイス・ナッタラット)から白血病で余命いくばくもないので、最後の頼みを聴いてほしいといわれて急遽バンコクに戻る。
ウードは元カノのアリス(プローイ・ホーワン)に返しそびれたものがあるので直接会って渡したい。一緒に行ってくれというのだ。実はかつて3人はニューヨークで成功を夢見ていた。だが、故郷のタイに戻るというアリスにウードがついていくことになり、ボスは一人残されていたのだ。アリスがいる郊外の街まで、ウードのぼろ車で2人は出発する。カセットテープの懐かしいラジオ番組を聞きながら…
【感想】
古くは舞踏会の手帳なんてありましたが、余命いくばくもないウードと一緒に、思い出の人たちを巡る、よくあるロードムービーだと思ってました。若いころに一緒に夢を見た人たちのところに、人生最後(といってもまだ30ぐらい?)に再び会うというのは映画の王道パターンでしょう。昔を懐かしむ人、ひどい別れをしたため激怒する人、そりゃいろいろあるだろうなと思います。
冒頭、予告編にもあるようにニューヨークのバーでジャズをBGMに華麗なカクテル裁きをみせるボス。客の女の子たちにももてもてのプレイボーイで、音楽やライティングのセンス良さもあって物語に惹きつけられていきます。しかし、ウードやアリスなど昔馴染みとの思い出がフラッシュバックで入ってきて、ある意味、ニューヨークでバーを開く夢はかなったのですが、それが当初思い描いたこととは違っていることが分かります。このへん若者2人が主人公なのに、えらく渋い感じ。それだけ夢の消費期間は短いのでしょうか。
しかし、単なるロードムービーにならないのは、カセットから流れるラジオ番組。渋いおっさんが渋い選曲をしていると思いきや、実はそれがウードの亡き父だったということが明かされます。これもまた、彼にとって何物にも代えがたい思いなわけで、洋楽、タイの音楽を交えつつ、ノスタルジックな世界に引き込んでいきます。
そして剛腕だと思ったのが後半の展開。凡百の亡くなる前のロードムービーとみせかけて実は…というふうに話が盛り上がっていきます。正直、前半にまったく触れられなかったのでいきなり感もありますけど、人生なんてそんなものかもしれません。何もかが分かりやすく提示されるわけではない。このあたりがうまくつながれば大傑作になったのにもったいないなという気もします。
バズ・プーンピリヤ監督の名前を日本でも知らしめた「バッド・ジーニアス」と違って、ノスタルジックでベタベタに甘いストーリーなんですが、スタイリッシュな演出でうまく隠しています。そしてなによりもバーテンという仕事だから出てくるオリジナルを含んだ数々のカクテル。見終わった後、本当にお酒が飲みたくなります。ウォン・カーウァイがプロデューサーというのがあるかもしれません。個人的には教会の銃撃シーンで、鳩が無意味に飛んでいたのがジョン・ウーのパロディみたいで坪に入りました。
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