作品情報 2022年日本映画 監督:松本優作 出演:白鳥晴都、川島鈴遥、オダギリジョー 上映時間:121分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2022年劇場鑑賞209本
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【ストーリー】
川崎の児童養護施設で暮らす13歳の優太(白鳥晴都)は学校でいじめられ、施設にもなじめなかった。事務室で自分を捨てた母(松本まりか)の住所をしった優太は、脱走して母が住む千葉県の漁村へやってくる。
最初は歓迎した母だが、若い愛人(若葉竜也)と暮らしておりすぐに邪魔者扱いに。迎えに来た施設職員の宮本(木竜麻生)を振り切って逃げだした優太は、軽トラックに住むホームレスの坂本(オダギリジョー)と出会い、一緒に暮らすことになる。家族や学校に居場所がなく、坂本のところに遊びに来る女子高生詩織(川島鈴遥)は、そんな優太のことを気に掛けるのだが。
【感想】
なんといっても白鳥晴都の目力、表情の巧みさに舌を巻きます。本人の才能と松本監督の演出の両方があるのだろうけど、施設での孤独な表情、母に再会した時の喜びの表情、そして、表題通りの状況になった時の、何も光のない表情。大人と子供の狭間といえる13歳らしい揺れる心、足りない思慮やどうすれば内にこもった感情を出せるのか苦しむ様子などなど、とにかく彼の演技から目が離せませんでした。
それをオダギリジョーのいつものちょっといい加減で小ずるい大人の演技がうまくはまります。児童相談所の職員は清く正しくを求めて息苦しいし、母は自分よりも愛人のほうを優先する。そんななか、絶妙な距離感でいいかげんな大人がすぐそばにいることが、孤独な少年をどれだけ勇気づけたことか。このほか、松本、若葉をはじめ配役もまさに適材適所で、安定感はぱねえ。松本監督の今後の作品も楽しみです。
もう一つ、そろそろ性へのあこがれが出てくるわけで、詩織への思いは劇中はプラトニックなものですけど、初恋をこんなふうに体験できたことも将来、優太が大人になったときに糧になるでしょう。しかし、それ以外の世間は優太に冷たい。施設や親は優太に手を差し伸ばそうとしたのだから、優太に余裕があればこんな目にはならなかったろうにと思えてなりません。そこがやはり子どもなんですよねえ。
松本監督は初長編だということもあり、海に浮かぶ太陽をはじめ美しい自然のカットを多様するなど工夫をこらしていました。半面、ある意味、想定の範囲内でとどまった出来事がいくつかあり、それらの描写を含めてちょっと長く感じたことも事実。編集の田巻源太は「やがて海へと届く」「静かな雨」など、僕の好きな渋い作品の編集を手がけてきただけあって、本作も落ち着いた雰囲気に仕上げているけれど、もうちょっと短くしぼったらなという気もしました。
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