作品情報 2020年フランス映画 監督:エマニュエル・クールコル 出演:カド・メラッド、ダヴィド・アヤラ、マリナ・ハンズ 上映時間:105分 評価★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2022年劇場鑑賞215本
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【ストーリー】
売れない俳優のエチエンヌ(カド・メラッド)は刑務所で囚人たちの文化活動のため、演劇を教えることになる。パトリック(ダヴィド・アヤラ)、アレックス(ラミネ・シソコ)ら癖のある5人の囚人は最初は演劇に興味がなかったが、エチエンヌの演技指導で次第に練習にも熱が入る。
刑務所内での公演が好評で気をよくしたエチエンヌは、渋る所長(マリナ・ハンズ)を説得し、街中での劇場での公演を決める。演目は「ゴドーを待ちながら」となり…
【感想】
この手の映画だったら最初はダメダメでも熱血的に盛り上がって、難題も何とかクリア。チームは一丸となり大舞台にのぞみ、BGMで盛り上げるというのが定番です。ところが、本作は一切ない。囚人たちが演劇にはまっていく様子もひたすら淡々と描いていいます。また、ダメダメの部分も演技的にはそれほどない。難題も刑務官が厳しいという、本筋の演劇とは関係ない部分。なんか盛り上がりがないままラストまでいっちゃいました。
劇中で演じられる「ゴドーを待ちながら」がそのキーポイントなんでしょう。僕は名前はしっているけれど見たことはありません。ただ、現代人の不安や孤独を表した不条理劇であり、囚人たちが将来への不安や家族、友人と切り離された孤独に満ちているわけですから、その象徴です。「ゴドーを待ちながら」を観ていれば、本作についてももっと深く鑑賞できたかとちょっと残念。
さらに、フランス(元ネタはスウェーデン)という個が自立して、自由への渇望が強い国だからというのもあります。日本ではとても考えられない。何しろ「ゴドーを待ちながら」の原作者のベケットは、元ネタの事件を高く評価したというのですから。途中、ちらっとだけ被害者の気持ちはみたいなことを刑務所長がいうシーンがありますが、エチエンヌは無視します。つまり、どんな悪人にも人権があり、個々人としてみるべきだということ。このへんは僕からするとちょっと納得しにくい感情でした。
カド・メラッドをはじめむさくるしいおっさんか、ごっつい囚人たちばかりが主役で、フランス映画っぽい艶っぽい描写がなく、ひたすら抑制されたタッチだったのも見ていてだんだんしんどくなりました。個人的には重罪を犯したならきちんと償う必要があるし、刑務所側はそれを守らせるべきだと思うのだけど、この辺は国情、風土の違いなんだろうなあ。
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