作品情報 2020年イギリス、アメリカ映画ドキュメンタリー 監督:ルーク・ホランド 上映時間:94分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2022年劇場鑑賞216本
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【ストーリー、感想】
冒頭、モンスターよりも大勢の普通の人の方が恐い。簡単に信じ込んでしまうから、という格言が流れます。実際インタビューに出てくる元ナチスの軍人や収容所で働いていたという女性は気のいいおじいちゃん、おばあちゃんがほとんど。当時のドイツではユダヤ人迫害が当然だし、小学生がクラスでユダヤ人商店にいやがらせをしにいったそうですから、自分たちの正しさを疑っていなかったことがわかります。さらに、当時のドイツの庶民の映像が流れますが、みんな楽しそうに歌ったり踊ったりしています。その裏で何が起こったか知らなかったのか、無視していたのかわからないけど、元気いっぱいの子供たちが大人になったらひどいことをしたのかと思うと暗然とします。
僕自身、当時のドイツに生まれていたら、迫害に加担していたも不思議ではありません。はっきりいってどんなフィクション映画よりも怖かった。人間は環境によっていくらでも極悪になれるというのがわかるのですから。
21世紀になって自分たちのやったことは罪だったと反省して若い世代のネオナチ!へ平和の尊さを訴えるおじいさんがいる一方、いまだにヒトラーの支持を公言してカギ十字を部屋に飾っているおじいさんもいました。ナチス支持のおじいさんは、ナチスを批判したら自分の人生が否定されると語っていて、高齢者だからこそ過ちを認められない愚かさも感じさせられました。また、収容所の警備員だったのに、自分は関係ないと言い張る人もいて人間の弱さ、愚かさを感じさせられました。
第二次大戦の悲劇を反省し、高度情報社会になったのに、今でもロシアや中国、北朝鮮など世界各地で残虐行為が行われています。はたまた日本でもディープステートから世界を守るのはトランプ氏で日本人に現金を配るとか、ワクチンは宇宙人の陰謀だとか信じている人がいて、こういう人たちはちょっとしたきっかけで暴力に走りそうで怖い。決して80年前の出来事だと笑えない作品でした。
これが遺作となったホランド監督は祖父母をホロコーストで失っていますが、元ナチスの親衛隊員らを含むインタビューした人を一方的に責めるのでなく、彼ら彼女らの言い分をたっぷりと聞かせてくれます。それにたいする批判的な映像や発言もほとんどない作りも好感が持てます。観る人がどう受け取るかということでしょう。
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