作品情報 2022年日本映画 監督:長澤雅彦 出演:新津ちせ、加藤ローサ、徳井義実 上映時間:108分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ港北 2022年劇場鑑賞220本
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【ストーリー】
小学4年生の凪(新津ちせ)はアルコール依存症の父純也(徳井義実)の面前DVに苦しめられ、母真央(加藤ローサ)の実家がある瀬戸内海の小さな島に引っ越してきた。祖母の佳子(木野花)は島で唯一の診療所の医師。真央は本土の病院の看護師をしており忙しい。
最初はとまどった島での生活も雷太(佐藤蒼希)、健吾(角忠聖)のワルガキ2人とすぐに仲間になり、担任の河野(島崎遥香)の配慮があってすぐに溶け込んだ。だが、時折DVがフラッシュバックすることがあり…
【感想】
凪から見た世界をいくつかのエピソードで結んでいます。母親が忙しくなかなか相手にしてくれなくても愛情を受けているのは分かっているし、なにより、友達と遊びまわるので寂しくない。まだ小4で男女のわけへだてなく友情が結べる。瀬戸内海の美しい島ならではの自然で遊ぶとともに、現代っ子らしくニンテンドースイッチの話題で盛り上がったりする、そんな等身大の生活がうらやましい。
島の小学校の教師は河野だけ。複数の学年が一緒のクラスになっており、大人たちも子どものことを温かく見守る。都会ではありえないような豊かな人間らしい生活で、塾まみれの都会の子どもでは考えられない生活です。もちろん、偏差値的には全然かなわないでしょうが、人間にとって何が大切なのか、考えさせられます。
それでいて、美しい田舎ぐらし万歳ではありません。島の診療所には対した設備がないわけですから、急患がでると本土まで小さな漁船で運ばなければならない。手当が遅れて取り返しがつかないことも。さらに過疎化は進み、濃厚すぎる人間関係がうっとうしくなりそう。制作側が露骨な悪人を登場させないことで穏やかに見られますが、現実にはどうなのかなと思うこともありました。
それはさておき、凪たちは大人にとってはよくある、でも子どもたちにとっては大きな出来事を過ごしていきます。いつも怖い顔をしている用務員(嶋田久作)を笑わせようとしたり、河野に憧れている漁師で子どもたちの兄貴分の浩平(結木滉星)の恋を応援したり、遊んでいた健吾が大けがをしたり。そして、純也が島に現れることで家族の絆は何だったのか問われることになります。
新津はさすがの芸達者。友情、家族や教師との関係、淡い恋への憧れといったこの年頃特有の心情を見事に表現しています。母方の実家が山口ということもあり、土地勘もある。一方、佐藤、角の演技がいかにも田舎の子どもっぽい素朴さがあるだけに、都会からきたちょっと元気な転校生という役にもはまっていました。大人たちの配役も見事で、久しぶりに見た加藤ローサがいまだに若々しいのはびっくり。また、雷太の祖父役で、山口で活動している室積光の地に足のついた雰囲気が物語のリアルさを増していました。主題歌のKitriや美しい瀬戸内海の風景も含めて、夏休みにぴったりの癒される映画です。
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