作品情報 2021年韓国映画 監督:ピョン・ソンヒョン 出演:ソル・ギョング、イ・ソンギュン、チョ・ウジン 上映時間:123分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2022年劇場鑑賞222本
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【ストーリー】
1960年代、北朝鮮出身で韓国では迫害されていた薬剤師のソ・チャンデ(イ・ソンギュン)は、野党の国会議員候補、キム・ウンボム(ソル・ギョング)の演説に感銘を受ける。だれもが差別されずに自由に発言できる社会を作ろうと訴えていたのだ。
だが、ウンボムは真面目すぎて選挙は落選続き。一方、天才的な頭脳を持つチャンデはウンボムの参謀を志願。あまりにも悪辣で常識外れの戦術で、ウンボムは当選。やがて野党の大統領候補の一人にも数えられる。一方、与党のイ室長(チョ・ウジン)はウンボムの陰にチャンデがあることを知り、彼に圧力と買収を手がけてくる…
【感想】
登場人物は仮名になっていますが、韓国の人だったらモデルは想像つくのでしょうね。真実をベースにした物語ですが、買収や選挙妨害がすさまじい。与党は莫大な資金で片っ端から買収をしていく。それに対して「選挙に勝つためなら親の位牌も売り飛ばす」とまで悪口を言われたチャンデは奇想天外な対策をうっていく。他の候補者がこない田舎へ行って、泥田でドロドロになるとか、日本でも小沢一郎氏が盛んにやっていた戦術ですし、東アジアの選挙って似たようなもんだなと妙に感心しました。
ウンボムの初当選から、野党で頭角をあらわして野党の大統領候補選までチャンデの活躍は続きます。しかし、彼の悪辣な方法は事務所内でもつまはじきになっていました。チャンデもずっと汚れ仕事ばかりの裏方がしんどくなります。そんなチャンデの理解者がウンボムだったのに、周囲の影響もあってだんだん二人の関係に亀裂が入っていく様子は見ていて哀しくなってきます。
独裁政権のなかで理想を掲げるウンボム、理想だけでは選挙に勝てないというチャンデ。互いに相手を理解していたはずなのに、国民をどう思うのか。政治家は国民の代表なのか、それとも駒にすぎないのか。チャンデも当初は理想のために身を殺すつもりだったのが、しだいにそれだけではたりなくなる。さらに、与党の買収選挙のほうがチャンデの実力をいかせるというのも何とも皮肉です。
恋愛シーンは一切なく、出てくる数少ない女性も事務所の女性秘書やウンボムの奥さんと選挙がらみの話ばかり。チャンデの家族もちらっとしかでてきません。ひたすら政治をめぐる緊張したシーンの連続で、とにかくしびれました。それこそ三国志でもみているような権謀術数の数々。終盤、チャンデとウンボムが昔馴染みの食堂で、鶏を巡るエピソードを語り合うシーンは本当にすさまじい。政治好きには見逃せない作品でした。ソンギュンの渋い声が同性の僕から見てもたまらなかった。
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