作品情報 2010年カナダ・フランス映画 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演:ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーラン、マキシム・ゴーデット 上映時間:131分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2022年劇場鑑賞224本
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【ストーリー】
現在のカナダ。急死した母親のナワル(ルブナ・アザバル)の遺言を聴いて、双子のジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)は驚く。彼らの父親と兄にある手紙を渡せというのだ。ところが2人は父親は1970年代のレバノン内戦で死んだと聞かされ、そもそも兄がいることをまったく知らなかった。
ジャンヌはレバノンの母の故郷に行き、手掛かりをさがす。今さらばかばかしいと消極的だったシモンだが、ジャンヌから母の怖ろしい秘密がわかったと連絡があり…
【感想】
淡々とした描写が続き、油断したところに衝撃的なエピソードがぼんぼん放り込まれる。レバノン内戦と現在を結んだ、家族の残酷な運命と愛のストーリーです。何をいってもネタバレになりそうなのですが、できるだけ前情報無しでみてもらいたいタイプの作品です。。
物語は章にわかれて、ナワルの若いころと現代のきょうだいの調査が交互に描かれます。レバノン内戦はキリスト教徒とイスラム教徒の対立が原因でした。当時のレバノンはキリスト教徒が多かったのですが、パレスチナ難民の流入でイスラム教徒が増えてきたため争いが絶えなかったのです。ナワルはキリスト教徒ですが、当時の女性の地位は非常に低く、モノ扱いされていました。
そんな彼女は大学へいき、学生新聞に勤めて平和を訴えようとします。しかし、世の中そんなに甘いものではありません。これまで同じ国民として一緒に暮らしていた人たちが平然と殺し合いを始める。女だろうが子どもだろうが容赦がありません。ドゥニ監督らしいシビアな演出で、幼い子供が平然と殺されるシーンは目をそむけたくなりました。しかし、実際に今でもそういうことが起きているのですよね。
映画のキモとなる部分は実際にはまず起こらないだろう偶然といえます。しかし、世の中には常識では考えられないことが起こるのも事実。その描写も含めて、変にドラマチックに盛り上げようとせず、BGMも抑えて俳優の演技、それもセリフ以外で伝えるというのがさすがドゥニ監督。絶対に見逃せない監督だと改めて思いました。
タイトルの通り、砂や泥にまみれたレバノン(ロケはヨルダンですが)で、血と汗にまみれた住民たちの姿は見ていて耐え難いほど。内戦前のレバノンは中東のパリと呼ばれ、平和で繁栄した町でした。それが圧倒間にこの世の地獄に。ウクライナを見ていると、何年かさきにこうしたことが起きても不思議ではない。人間の愚かさ、業の深さというのは決してなくならないと思わされました。
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