いかにもヨーロッパ映画らしい重厚かつ人間の愚かさをとらえた文芸作品。ただ、3時間弱は長すぎました。2時間までは引きつけられたんだけど、終盤、どんどん集中力が無くなっていく自分が哀しかった。
作品情報 2021年ハンガリー、ドイツ、フランス、イタリア映画 監督:イルディコー・エニェディ 出演:レア・セドゥ、ハイス・ナバー、ルイ・ガレル 上映時間:169分 評価★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2022年劇場鑑賞225本
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【ストーリー】
1920年、貨物船の船長ヤコブ(ハイス・ナバー)は、船上で体調不良になったことから周囲から結婚を勧められる。マルタのカフェで友人のコードー(セルビオ・ルビーニ)に最初にカフェに入ってきた女性と結婚すると宣言。その通り、最初に入ってきた若い美女リジー(レア・セドゥ)にいきなりプロポーズ。即結婚することになる。
だが、船乗りの仕事は何カ月も家を明けることになる。しかもリジーにはイケメンの友人デダン(ルイ・ガレル)ら親密そうな男が何人もいる。次第に不安と焦燥にかられるヤコブだったが…
【感想】
カメラワークは俯瞰気味でとっているので最初は分かりませんでしたが、基本的にヤコブの主観の話だと分かってから理解しやすくなりました。例えば、ヤコブがリジーにプロポーズしたのは、コードーとの会話が盛り上がったからだとわかります。しかし、なぜ、若い美女のリジーが会ってすぐに、年上のおっさんのプロポーズを受けたのか、普通の作品だったら説明があるでしょう。しかし、本作はヤコブの主観だからリジーの気持ちは分からない。そういう状態がずっと続きます。
だから、リジー以外の登場人物、コードーやヤコブと運命的な出会いをする若い女性のグレーテ(ルナ・ウェドラー)といった面々は唐突に物語に現れては消えていきます。これも客観的な状況説明でなくてヤコブの主観だからと考えればよくわかる。そして、リジーがヤコブのことを愛していたのかどうだったのかというこの映画の主題もです。
客観的にみればリジーは、ちょっと小悪魔的なところはあるとはいえヤコブのことが好きだとわかるでしょう。しかし、自分にコンプレックス―なかなか会えないとか、自分みたいなおっさんに若い美女が好きになるのかとかーがあるため、ヤコブは素直に彼女を観ることができません。同時にリジーも一人の女なわけですから、ヤコブが前のように愛さなくなるのを敏感に感じて不快に思う。夫婦の関係はそうやってどんどん険悪になっていきます。そのあたりはリアル。オチは賛否両論みたいですが、僕は好きなオチでした。
ただ、そんなメロドラマをいかに重厚長大で映画化するのか。クラシックを多様したBGM、ファッション、自動車など当時を再現した美術などは完璧。さらに、説明をしないことによってかえって文学性を高めるように仕向けます。妙に間をおいたり、画面を切り替えずに長々と映したりというのも文学性を高める演出に見えました。
なんといっても本作はレア・セドゥの小悪魔的魅力から成り立っています。小悪魔といっても存在感はどっしりしていて、かといってファムファタールと呼ぶには素直なところがみえてしまう。まさに彼女しかできないでしょう。ハイス・ナパーはオランダの名優だそうですが初見。おっさんに見えましたが実年齢はセドゥと5歳しか差がないのですよね。また、ルイ・ガレルは「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」にも出演しており、なんか似たような題名の作品にでているのがおかしかった。
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