2022年09月04日

サバカン SABAKAN

 1980年代の長崎の漁村を舞台に、少年2人のひと夏の友情と冒険を抒情的に描きました。同種の作品はあるけれど、子役2人の等身大の演技と美しい自然に癒されます。

 作品情報 2022年日本映画 監督:金沢知樹 出演:番家一路、原田琥之佑、草なぎ剛 上映時間:96分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2022年劇場鑑賞228本

 【ストーリー】
 売れない小説家の久田孝明(草なぎ剛)はサバの缶詰をみると、自分が故郷・長崎で過ごした小学校時代の親友、竹本(原田琥之佑)のことを思い出す。1986年夏、小学校5年生だった久田(番家一路)は読書好きの大人しい少年だった。口うるさい母(尾野真千子)や調子の良い父(竹原ピストル)に育てられ、のびのびと過ごしていた。

 夏休み、貧乏のためクラスで浮いていた竹本がやってきて、山を越えた先にあるブーメラン島に現れたイルカを観に行こうと誘ってくる。最初は渋っていた孝明だが、とうとう押し切られて子ども用の自転車に二人乗りで出発する。大人にとっては大したことのない距離だが、小学生にとっては大冒険の始まりだった。

 【感想】
やっぱり子どもはのびのびとした環境で暮らせるのが最高だと思わされます。国語の成績は良いものの、ほかはさっぱりの孝明。家に大したお金があるわけでないけれど、にぎやかな両親のお陰で、精神的には不自由なく育ちます。都会の小学校低学年のうちから塾や習い事付けの子どもたちより、どれほどいきいきしているか。

 ただ、そんなきれいごとでないのがお金の存在。竹本は漁師だった父が遭難死して、シングルマザーの母(貫地谷しほり)に大勢の兄弟とともに育てられています。家は貧乏で、たいして豊かでない漁村でもバカにされるほど。こういう田舎のちょっと汚いところもきっちり映しています。

 2人の冒険も意地悪な大人なヤンキーに邪魔されて大変な目にあいます。しかし、いっぽうで年上の女子高生のお姉さん(茅島みずき)に助けられ、淡い初恋を抱くなど小学生っぽい初々しさがたまりません。茅島はこういう、ちょっとミステリアスな役はよく似合うし、田舎の小学生なんか簡単にノックアウトされるでしょう。もう一人、孝明の従姉妹の亜子(福地桃子)も頼れるお姉さんで、子どものころからうらやましすぎます(笑)

 大冒険に乗り出した2人ですが、しょせん子ども。大人の事情にはかないません。また、ふとしたことで子どもの友情は簡単に途切れることもあります。それだけに30年以上たって中年になった孝明にとって、まるで昨日のように思えるのでしょう。そしてその美しい思い出が、中年になっても生きていく支えになったりします。このあたりの抑えた心情風景もなかなか見事なもの。

 なんといっても子役2人が、巧拙を吹き飛ばした存在感で良い。そして、尾野、竹原の両親がしっかりと庶民的な雰囲気をだしていて、物語を地に足をつけたものにしてくれます。草なぎの落ち着いたナレーションも心に染み入ります。なによりも美しい長崎の漁村の風景が、一度も言ったことがないのに郷愁をかきたててくれました。
posted by 映画好きパパ at 10:49 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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