2022年09月06日

グリーンバレット

 斬新なアクション映画を次々と発表して邦画ファンに衝撃を与えている阪元裕吾監督の新作。「最強殺し屋伝説国岡」の続編ですが、前作を観ていなくても大丈夫。意外なことに負け組が頑張る青春アイドル映画とみても非常に面白かったです。

 作品情報 2022年日本映画 監督:阪元裕吾 出演:伊能昌幸、 和泉芳怜、板尾創路 上映時間:106分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2022年劇場鑑賞230本



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 【ストーリー】
 殺し屋が職業として成り立っている世界。京都の伝説的な殺し屋国岡は、東京で殺し屋のベンチャー企業の社長(碕理人)から、殺し屋志望の女子6人(和泉芳怜、山岡雅弥、天野きき、辻優衣、大島璃乃、内藤花恋)に合宿で訓練してほしいと依頼を受ける。

 殺し屋合宿のために広大なキャンプ地を提供した浜辺(板尾創路)、国岡を師匠と慕うチンピラ殺し屋の真中(松本卓也)とともに、インストラクターとなった国岡だが、6人のマイペースぶりに振り回される。そこへ…

 【感想】
 ゆるーいコメディと極めて高度なアクションは一緒ですが、これまでの阪元作品と異なり、勧善懲悪にふっているので初心者にもみやすいかも。前作では国岡は罪のない人も巻き込んでバタバタと暗殺をしていましたけど、本作は女子6人を育てることもあり、悪者としか戦ってないですからね。個人的には理不尽に周囲の人がひどい目に合うのも、いつ災難に遭うかわからない現実を反映しているみたいでしたけど、こちらのほうが安心して見られます。

 6人のキャラが見事に立っているのがすごい。しかも、ネットワークビジネスに騙されていたり、友人のいわれるまま主体性がなかったりと、今風の負け組っぽい彼女。社長もいかにもうさんくさく、殺し屋になったら金持ちになれるというのだけど、その金持ちというのがシャトーブリアンを食べられるというのはまだしも、ウーバーイーツでいつでも頼めるというレベルで、今の若い世代の金銭感覚がいかに乏しいのか実感できました。何気に現代社会の風刺を盛り込んでいる気がします。

 さらに、一応モキュメンタリー形式をとっていて(途中からどこかへいくのですが)、監督助手の大坂(大坂健太)がとにかくうざい。リアルの大坂健太も京大の学生だったのですが、映画の中の大坂も自分が大卒だということが唯一の自慢で、ねちねちと国岡と真中にダメだしをする。この会話シーンのシュールなところも腹を抱えて笑いました。一方で、前作では冴えない真中が、本作では良い方向にバカさがぶっ飛び、株は赤丸急上昇。
 
 6人はそれぞれ愛おしくなるのだけど、親の英才教育を受けてすごい生真面目なのに才能がなくてだめだめの鹿目(大島璃乃)が一番おいしいところをもっていってます。いくら努力しても結果が出なかったり、周囲から白けて見られたりすることってあるじゃないですか。そんな彼女が最後に爆発するときは、本当に心の底から応援しちゃいました。ダメダメで負け組の6人が訓練で一致団結して成長する。青春映画の王道を殺し屋というテーマで描いたのは驚きです。また、グラドルなのに露出がいっさいなく、もっさいジャージ姿がほとんどという潔さも良い。また笑えたのが東雲(辻優衣)があからさまに怪しいおっさんのビジネスを信じていて、それを布教しようとしたらみんなが何も言わずに引いていったところ。友人知人がネットワークビジネスやらフェイクニュースやらにはまっていても、わざわざ忠告しようと思わないのがまさにリアルだとツボっちゃいました。

 そんな彼女たちをうまく突っ込む国岡も本当に美味しい役でした。あれだけ強いのに、前作同様、恋愛面でポンコツというのも、いかにも国岡らしくていい。阪元作品は毎回、アクション監督が異なるイメージで本作は坂口茉琴が担当していますが、国岡のアクションは前作同様、息をのむような体術の連続です。また、演技もアクションも未経験の6人が最初、とまどいながら体験するアクションというのもいかにもリアルな感じ。クライマックスの死闘で6人が覚醒するというのは、いかにも映画的ですが、それもまた物語を盛り上げてくれて良かった。

 阪元監督は今後、ベイビーわるきゅーれの続編を製作するそうでそちらも楽しみ。同時に、6人も登場する国岡ワールドとクロスオーバーして製作してほしいです。
posted by 映画好きパパ at 09:49 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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