作品情報 2022年アメリカ映画 監督:ジョーダン・ピール 出演:ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、スティーヴン・ユァン 上映時間:131分 評価★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2022年劇場鑑賞236本
【ストーリー】
ハリウッド郊外で撮影用の牧場を運営するOJ(ダニエル・カルーヤ)だが、腕利きの父(キース・デヴィッド)が半年前事故死して以来、経営はさえなかった。妹のエメラルド(キキ・パーマー)も家業に力を入れない。牧場のそばで西部劇のテーマパークを運営する元子役のリッキー(スティーヴン・ユァン)から牧場を買収したいとの申し出もあった。
ある晩、脱走した馬を追いかけたOJは、謎の飛行物体が馬を襲うのを目撃する。OJとエメラルドは物体を撮影して大儲けしようと企むのだが…
【感想】
物語の序盤、史上最初に撮影された2頭の馬の騎手が実は黒人だったのに歴史の闇に葬り去られたというエピソードがエメラルドから語られます。映画に限らずアメリカ社会を黒人が支えてきたのに、歴史としての凝っているのは支配者たる白人だけだという、最近お得意のポリコレ的テーマです。
また、映画の一番最初はリッキーが子役時代に経験した、撮影中のチンパンジーが大暴れするというできごとから始まります。猿が白人社会ではアジア人の象徴として描かれたことはよく知られた事実であり、本筋にあまり絡まないですがアメリカの少数派のアジア人を準主役に取り上げたというのもピール監督らしい。あまり考察サイトにはのっていないのですが、同じ有色人種でも経済的に貧しい黒人と、白人社会社会でも成りあがっていくアジア系の対比なのかと思いました。黒人が主役でアジア人が成金の嫌な役でひどい目にあうのだは、ピール映画の視聴層である黒人や、リベラルな白人にとって痛快なのだろうと思います。
その後の謎の飛行物体をめぐる騒動も、OJたちがなぜその様子を撮影して大金になると考えているのかが、やはり日本からするとピンとこない。同じようなアイデアだったら「オカルトの森へようこそ」のほうが、日本の実情にもあってるしはるかに面白いエンタメでした。
とはいえ、エヴァンゲリオンにインスパイアされたという話もでている謎の飛行物体の形などはユニーク。また、なんだかんだいって130分以上、最後まで楽しませてくれる腕前はさすがです。もっとも、繰り返しになりますが本質的な理解はアメリカ社会に住んでいないと分からないだろうなという気がしますし、ダニエル・カルーヤが主演したピール監督の出世作「ゲット・アウト」のほうが、黒人差別のひどさが素人にも分かって面白かった。
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