2022年09月23日

よだかの片想い

 恋愛映画の名手城定秀夫の脚本を新鋭女性監督の安川有果が映画化。島本理生の原作は未読ですが、女性心理の細やかな表現はさすが。中島歩の存在感と松井玲奈の表情、仕草も見ごたえがありました。

 作品情報 2022年日本映画 監督:安川有果 出演:松井玲奈、中島歩、藤井美菜 上映時間:100分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2022年劇場鑑賞239本



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 【ストーリー】
 生まれつき顔に大きなアザのあるアイコ(松井玲奈)は恋愛に消極的になってしまった。だが、友人の編集者マリエ(織田梨沙)の企画で顔にアザがある人の本がベストセラーになり、映画監督の飛坂(中島歩)による映画化の企画も始まる。

 最初は映画化に気乗りがしなかったアイコだが、飛坂と会ううちに彼女の容姿を気にせずに自分だけを見てくれることに気づき、恋に落ちる。だが、いざ恋愛関係になっても仕事が忙しい飛坂と次第にすれ違いが起きていく。さらに、映画の主演女優で飛坂の元カノの美和(手島美優)からあることを指摘され…

 【感想】
 生まれつきアザのある人の生きづらさを取り上げたニュースを見たことがあります。本作で盲点だと思ったのが、小学校の時まで大して気にしていなかったのに、同級生からアザのことを言われた際、先生が激怒したエピソード。それでかえって自分の容姿がいじられるのダメなほどなんだと思いこんでしまう、善意だからこその難しさにはっとしました。自分の知人の男性にもアザがある人がいますが、会ったばかりのころは何も触れまいとしている自分の行為が、かえって相手に負担になってるかと思ったことを思い出しました。

 さて、映画監督として真実を撮るのが得意なのか、飛坂はアイコの容姿のことは気にせず普通に接していきます。それは彼女にとって新鮮だったのでしょう。そのうえ、イケメンの人気映画監督なんだからいうことなしですよね。でも、容姿のことだけでなく、アイコの心情を気にしないということでもありました。これは古くからの仕事と自分、どっちをとるのかという問に通じるのだけど、これまで人と接してこなかったアイコにとっては、もうちょっと包容力のある相手のほうが良かったのでしょう。人の出会いや女心の難しさも伝わってきます。

 一方、大学院生のアイコはミュウ先輩(藤井美菜)や安達教授(三宅弘城)、後輩の原田(青木柚)がフランクに接してくれることで、居心地の良さを感じています。この居心地の良さがプライベートでも感じられたらどんなに良かったのに、と思えてなりません。でも、飛坂のような危険な香りがする男に惹かれてしまうというのも女心なんでしょうねえ。

 そう思ってまったりみていたら終盤に思い切り予想を覆すようなシークエンスに発展していきます。いや、それだったら最初から話が違ってくるだろうと思いつつ、松井玲奈の表情でそのへんを語らせる演出も見事でした。AKB系出身の女優で、単なる美人でなく演技もしっかりできるようになれるかが生き残れるかの差だと思っており、松井はこういう演技もできるのかと感心してしまいます。一方、城定―中島歩の組み合わせだけで、中島がどんなにひどい役を演じても安心してみられます。いかにもいそうな映画プロデューサー役の池田良もなかなかうまい配役でした。
posted by 映画好きパパ at 06:30 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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