2022年10月31日

キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱

 キュリー夫人の伝記映画ですが、不倫など本人のマイナス面もしっかり描いています。また、広島やチェルノブイリなど放射能がもたらした災厄にも触れており、意欲的な作品なんだけど今一つこなれていない感じも。

 作品情報 2019年イギリス映画 監督:マルジャン・サトラピ 出演:ロザムンド・パイク、サム・ライリー、アナイリン・バーナード 上映時間:110分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2022年劇場鑑283本



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【ストーリー】
 19世紀後半のパリ。ポーランドから来た女性科学者マリ・スクウォドフスカ(ロザムンド・パイク)は女性ゆえに研究室の設備などに差別を受ける。だが、同僚の科学者、ピエール・キュリー(サム・ライリー)は彼女の才能を見抜き、共同研究に誘う。やがて2人は恋に落ちる。

 放射能に関する研究で2人はノーベル賞を受ける。だが、最初はピエールだけに打診が来たため、プライドを傷つけられたマリはピエールに怒りをぶつけるが、彼は優しく受け止める。しかし、知らない間にピエールに被爆の症状がでていた。やがて…

 【感想】
 小学校のころに読んだキュリー夫人の伝記と違い、不倫や異様なプライドの高さなど人間的な欠点もしっかり描いています。ただ、女性だということでアカデミアから差別されていた当時、プライドが高くなければやっていけなかったでしょう。そういう意味では自らも天才的な科学者で、かつ、妻に対して理解も包容力もあるピエールと出会ったことは、彼女にとってはノーベル賞受賞よりも幸せだったのかもしれません。

 監督のマルジャン・サトラピ(「ベルセポリス」)もイランからの移民女性であり、マリは自分の人生のお手本のようなものだったのかもしれません。ピエールが亡くなったショックから弟子のポール(アナイリン・バーナード)と不倫に走る愚かさ、娘でのちにノーベル賞を受賞するイレーヌ(アニャ・テイラー=ジョイ)との親しいけど緊張した関係、幼いころの母の死のトラウマ、降霊会にはまったことなどの弱さもちゃんと描いており、一人の人間としてのマリが浮き彫りになります。

 一方、途中で唐突に広島やチェルノブイリの情景、逆に放射線治療で助かった小児がん患者の様子などが入ってきます。原作が「放射能 キュリー夫妻の愛と業績の予期せぬ影響」(未読)というので、単にマリが女性差別、移民差別を勝ち抜いた強い女性だということを描くだけでなく、科学技術が光にも闇にもなることを考えてもらいたいというのが製作者側の考えなのでしょう。ただ、突然、時代が飛ぶので流れて気にどうなのかという気はしました。

 また、製作側は意図していなかったでしょうけど、日本公開時にはウクライナ戦争のまっただなか。晩年のキュリー夫人は第1次大戦中、まだほとんど実用化されていないX線診断器で負傷兵を診察してまわり、時には前線の野戦病院まで駆け付けました。キュリー夫人が軍の大臣に、X線で診察して死者が減れば兵力が増えると説明するシーンがありましたが、人道的なのと同時にナショナリズムの怖さも感じさせられます。
  
 ロザムンド・パイクはこういうエキセントリックな女性の役がよく似合います。現代的な美人の印象もありましたが、歴史的な映画にもふさわしいですね。サム・ライリーの一歩ひいた芝居も好感をもてました。何度も繰り返される炎の演出も印象的。

posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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