2022年11月11日

線は、僕を描く

 何かに打ち込む青春モノの映画では頂点といってもいいぐらい、精巧すぎるできばえ。特に水墨画も風景も、なにより登場人物たちを美しく切り取るカメラワークは、さすが小泉徳宏監督です。

 作品情報 2022年日本映画 監督:小泉徳宏 出演:横浜流星、清原果耶、三浦友和 上映時間:107分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:Tジョイ品川プリンス  2022年劇場鑑296本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
【ストーリー】
 大学生の青山霜介(横浜流星)は、ある事情から生きることに無気力になっていた。友人の巧(細田佳央太)に頼まれ、水墨画の野外イベントの設営バイトを引き受けた彼は、水墨画の巨匠、篠田湖山(三浦友和)から弟子入りを誘われる。

 湖山の元で水墨画を基礎から学び始めた霜介は水墨画の奥の深さに魅了されていく。一方、湖山の孫で、天才と呼ばれた千瑛(清原果耶)はスランプに悩んでいた。そこへ現れた霜介に対して、複雑な感情を抱いていく…

 【感想】
 水墨画のことは何も知りませんでしたが、これほど奥深い世界だとは霜介ならずとも驚きました。温厚でいつもニコニコしている湖山は具体的な指導、助言は何もしません。千瑛はそれが物足りず、不満が募ります。一方、白紙のような霜介はどんどん教えを吸収していく。千瑛にとって唯一の同世代の仲間であるとともに、技術は圧倒しているとはいえ、自分にないものを霜介が持っていることに気づき、胸中は複雑になっていきます。

 一方、霜介も自分には絶対届かない天性の華やかさがある千瑛はライバルというより憧れ的な存在。一歩でも近づこうと大変な努力をしていきます。2人とも根は素直で水墨画に対して真剣に向き合っており、美男美女にもかかわらずベタベタした関係に陥らないのが魅力的。凡人だったらあんなに美男美女がそばにいたらドキドキしちゃうだろうに、水墨画バカともいうべき2人の姿は本当に貴い。

 そして、2人を突き放しているようでしっかりみている湖山、目に見えるものだけを描くのではないということを身をもって教えてくれる兄弟子の湖峯(江口洋介)が、若さゆえに迷いもがく2人のいい指南役になります。こういう大人のありかたは本当にすばらしい。そして息抜き的なキャラとして霜介の親友の巧と美嘉(河合優実)が、一般人代表として良い息抜きになります。

 逆光や自然光のもとでのライティングはもとより、場面を省略したり説明セリフをできるだけ排することにより、緊張感を高めていきます。そこへ巧の騒々しいすがたなどをふっといれ、緩急を織り交ぜる。挿入歌やエンディング曲が元気がでるようなJポップも、本編のメーンのシーンの緊迫さを解きほぐす良い選曲でした。水墨画の執筆の実演も、どこまで本人が書いているかわかりませんが、まさに息をのむようにみせてくれました。

 本作での清原の美人ぶりは、数々の彼女の出演作の中でも群を抜いていました。彼女は恋愛にうつつをぬかすよりも、こういう凛として物事を成し遂げようとする姿のほうがよく似合います。また、河合も脇役ながら非常に魅力的に演じていました。細田だけが役柄的に貧乏くじかな。

 ただ、しいて言えば霜介演じる横浜があまりにも優等生的に見えたかも。巧く演じすぎていて、かえってフィクションっぽく見えちゃったところも感じられました。小泉監督は男性キャラより女性キャラのほうが巧く撮れる印象です。
posted by 映画好きパパ at 06:28 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。