作品情報 2022年日本映画 監督:高橋名月 出演:久保史緒里、萩原利久、小野莉奈 上映時間:98分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:Tジョイ横浜 2022年劇場鑑賞311本
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【ストーリー】
尾道のサラリーマン、半澤洋平(萩原利久)は優しいけど女心には鈍感で天然がはいっている。同棲して結婚間近だった恋人の玲奈(永瀬莉子)も呆れて出て行った。その晩、ポルターガイスト現象が起き驚く洋平の前に、若い女性の幽霊(久保史緒里)が出現。洋平にダメだしする。
現世の記憶がない幽霊に「愛助」と名づけ、2人の奇妙な同棲が始まる。恋愛経験のない愛助との生活は微笑ましい毎日だった。だが、洋平に思いを寄せる後輩の果南(小野莉奈)は、洋平がだんだん憔悴していくことを不思議に思い…
【感想】
幽霊と冴えない主人公の同棲って、まんがちっくだけど実写でみることは少ないなと思ったら、原作は漫画だそう。原作読者によるとHなシーンもあるそうですが、本作は乃木坂46の久保が主演ということもあってか、純愛にとどまっています。それがピュアで切ない。洋平の鈍感ぶりにイラっとしつつも、愛助の絶妙な突っ込みがすくってくれるし、2人の間が徐々に接近するのは王道とは言え、みていてキュンキュンします。
短編「正しいバスの見分けかた」で絶妙な会話劇をみせた高橋監督が共同脚本をしていることもあり、本作も各登場人物の会話が絶品。洋平のへんな間や間投詞は普通の作品ならテンポが悪くすると避けるけど、本作ではみごとにリアルな若者の会話となっています。幽霊というファンタジーを扱うだけに、些細な部分がリアルというのは作劇としてうまい。
尾道が舞台なだけに大林監督作品を想起しますし、劇中で尾道の名画座が重要な場所になるように、映画愛がしっかり盛り込まれているのもたまらなく素敵。瀬戸内海の美しい情景や、エンディング曲のどこか懐かしいインストルメンタルを含め、デビュー作の若手女性監督なのに僕のようなおじさんの心さえつかんでしまう演出はさすが。
久保は初めてしったのですが、全盛期の真野恵里菜を思い出させるノーブルな感じが幽霊という役柄にあっていて素晴らしい。若手なのにもはやベテランの域に達している萩原の受けの演技もあって、このカップルはいつまでも幸せになってほしいと思いました。プリン、サンダルといった何気ない日常品を使って、心の動きをみせる繊細な演技を萩原は当然でしょうけど、演技経験の少ない久保もしっかり表現しているのが良かった。
脇役では小野の胸の谷間をみせるようなあざとい演技もよかったけど、特筆すべきは不動産屋役の宇野祥平、果南の叔母で霊能力のある、みさき役の中島ひろ子という名脇役が、ちょっとうるさめの演技で物語を引き立ててること。宇野の電話の演技は全部アドリブかと思うくらい印象的ですが、高橋監督のNOTEに脚本に力をいれたとあるのには感心しました。若者の恋愛映画で大人の役割は極めて重要だと思っており、親や教師ではなく、本当の脇役なのに物語を推進させていくというのも、おじさんとしてはうれしかったです。
映画館がすずめの戸締まりとワカンダに占領されていますが、こういう小品こそ、映画マニア以外の普通の人にも楽しんでもらい、映画の面白さをしってほしいなあ。
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