2022年11月26日

サイレント・ナイト

人類最後の夜にどうやって過ごすかというテーマを豪華キャストでイギリス映画らしくシニカルに取り上げたブラックコメディ。コロナ前の製作ですが、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を予見したようなセリフも見所。

 作品情報 2021年イギリス映画 監督:カミーユ・グリフィン 出演:キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、ローマン・グリフィン・デイヴィス 上映時間:90分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ港北ニュータウン  2022年劇場鑑賞315本



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【ストーリー】
 環境破壊により有毒ガスが各地で発生。人類最後の夜になるクリスマスイブの日、イギリス政府は自殺用の毒物を国民に配った。思い思いに最後の夜を過ごす中、ネル(キーラ・ナイトレイ)とサイモン(マシュー・グード)夫婦は学生時代から家族ぐるみで付き合っている友人たちを郊外の豪邸に招待。最後の晩餐にのぞむ。

 最初はいつも通り振る舞っていた参加者も次第に最後の時が近づくとあせりだす。過去の秘密を暴露するもの、泥棒するもの、あげくのはては…。一方、ネル夫婦の長男、アート(ローマン・グリフィン・デイヴィス)は大人たちの都合で子どもまで殺されるのが納得いかない。何とか大人たちを説得して、生き残る方策を探そうとするのだが…

 【感想】
 ネルたちは割と裕福な生活をしており、豪邸や豪華なスポーツカーなど富を誇っています。しかし、人類滅亡となると難にも役に立たないのがおかしい。むしろ、安いクリスマスケーキが手に入らず悪戦苦闘するなど、金持ちぶった輩を徹底的にパロってます。「キングスマン」シリーズのマシュー・ボーンが製作なので、こういうブラックな社会派はお手の物。

 序盤は事前知識がなければクリスマスパーティのドタバタ劇にしかみえません。大人たちは学生時代のHな思い出で盛り上がり、泥酔して妙な雰囲気になるカップルも。これに対して子どもたちは、大人たちが地球環境を破壊したのに、何もすることなく自分たちを殺そうとするのが許せません。幼い子どもにとって親がなによりも大切で自分を守ってくれる存在なのに、自分たちを殺そうとするのですから。

 中盤、死の恐怖が近づいてからの狂騒劇は喜劇でもあり悲劇でもあります。政府や権威を盲目的に信じて、解決策をとろうとしない大人たち。カミーユ・グリフィン監督は日本でも知られている絵本「風が吹くとき」に影響されたといっています。同作は核戦争がおきたときに政府のいわれるがまま何ら実効性のない対策をとって、ゆっくり死んでいく老夫婦を扱った童話。本作はその現代版というわけです。自分たちは金持ちでさんざん環境破壊を繰り広げた挙句、政府や専門家のいうことをうのみにして、ただ死ぬだけの大人たちを子どもたちはどうみるのでしょうか。

 まだ、エリザベス女王存命時で、「女王はシェルターに入ったらしい」とか噂話が流れるのをはじめ、グレタさんや緑の党を信じれば良かったなどのかなり環境保護団体みたいなセリフもでてくるので、政治がかったところが鼻につくかもしれません。しかし、環境破壊でなくコロナやウクライナを考えると、本作のようなことはいつ起きてもおかしくないわけで、いざというときの人間の存在意義が問われます。オチは最初見たときは好みでなかったのだけど、後で反芻するうちにこれもありかな、と思いました。

 キーラ・ナイトレイは母親役になっても美しい。同時にあほなエセセレブの女性を好演しています。「ジョシュ・ラビット」で世界的に注目を集めた子役のローマン・グリフィン・デイヴィスはグリフィン監督の実の息子。「ジョシュ・ラビット」のスカーレット・ヨハンソンについで、世界有数の美女の子ども役というのは笑いました。演技力はさすがで、特にけいれんして××するシーンはまさに迫真。招待客の中ではジョニー・デップの娘で売出し中のリリー=ローズ・デップが印象的でした。好き嫌いは分かれるでしょうけど、個人的にはいろいろ考えさせられる作品です。エンディング曲の「きよしこの夜」もぴったりでした。
posted by 映画好きパパ at 06:37 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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