2022年11月28日

やまぶき

 岡山の田舎町の資本主義と家父長性社会に潜む悲劇と希望を描いた作品。ただ、1970年代の左翼的発想のうえ演出もスローテンポで、ちょっと合いませんでした。

 作品情報 2022年日本、フランス映画 監督:山崎樹一郎 出演:カン・ユンス、祷キララ、川瀬陽太 上映時間:97分 評価★★★(五段階) 観賞場所:ユーロスペース  2022年劇場鑑賞319本



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 【ストーリー】
 岡山県真庭市の山中の採石場で働くユン・チャンス(カン・ユンス)。元乗馬の選手だったが、父親の会社の倒産で日本に流れ着き、今は非正規雇用で、夫(松浦祐也)のDVから逃げてきた美南(和田光沙)母子と暮らしている。 

 一方、刑事の父(川瀬陽太)と戦場で取材中に亡くなったジャーナリストの母親(桜まゆみ)を持つ女子高生の山吹(祷キララ)は、政権に抗議して街角で黙ってサイレントスタンディングを行っている。2人とその周囲の人の運命はいつしか交錯はじめる。

 【感想】
 祷キララの主演だと思って見に行ったら、トップクレジットも役柄的でもカン・ユンスが主演。一応ダブル主演の扱いですが、ちょっと肩透かしでした。それはさておき、山崎監督は岡山県に在住し、トマト農園の傍ら映画を製作しているそうです。寡作ですが映画業界の評判は高く、公式サイトをみると犬童一心、黒澤清、濱口隆介、高橋源一郎ら邦画を代表する映画関係者の推薦コメントがずらりと並んでいました。16ミリフィルムでざらついた質感。政治批判や資本主義批判など都会的な商業主義の映画では絶対にできない対極の作り方としてあこがれているのかもしれません。

 さはさりながら、スローテンポのうえ様々な要素を詰め込んでいるのでちょっと散漫なイメージがしました。そもそも、岡山の田舎町で「辺野古の海を守れ」なんてプラカードをもってサイレントスタンディングしている人たちって本当にいるのでしょうか。それに絡む典型的なネトウヨも含めてリアル感に乏しい。

 また、資本主義批判をカネに関する不幸を語ることで展開しますが、これも2020年代になってこんなことを言われてもという気がしてなりません。一方で、チャンスが主人公なのに韓国人差別が露骨に見えないのもちょっと意外。外国人労働者問題も怪作「鬼が笑う」での深刻さに比べると、さらりとしすぎているような。

 カン・ユンスは岡山在住の韓国人俳優。これが初主演ですが、なかなか堂に入ったもの。祷キララは将来と現在を真剣に悩む女子高生役ですが、すらりとしたスタイルと目力がよくあっていました。個人的には娘には偉そうに説教するくせに、小心者の刑事役の川瀬陽太が、いかにも日本人的な底の浅さを表現していてツボに入りました。松浦、和田の「岬の兄弟」コンビが夫婦役とか、興味深いキャスティングです。

posted by 映画好きパパ at 06:16 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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