2022年12月09日

マスター 先生が来る!

 予告編をみて、歌と踊りに激強い主人公のアクションという典型的なインド映画かと思っていたら、半分はその通りだけど意外にダークでシリアスな部分があって驚きました。でも、格闘メインのアクションは胸熱です。

 作品情報 2021年インド映画 監督:ローケーシュ・カナガラージ 出演:ヴィジャイ、ヴィジャイ・セードゥパティ、マラヴィカー・モーハナン  上映時間:179分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キネカ大森  2022年劇場鑑賞330本



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 【ストーリー】
 バワーニ(ヴィジャイ・セードゥパティ)は17歳のときに両親をギャングに殺され、自らも罪をなすり付けられ少年院に入れられる。そこで看守もグルになって痛めつけられるが、不屈の精神で1年後には逆に少年院を支配。自らもギャングになり、罪が軽くなる幼い少年に自首させる手口で勢力を拡大していく。少年院は完全に無法地帯になっていた。
 名門大学の教授JD(ヴィジャイ)は、アル中気味だが腕っぷしは強い正義感。学校の経営陣からはにらまれているが、学生には大人気だ。しかし、学生会長選挙で乱闘が起きた責任を取らされ休職となり、少年院の教官にならされる。最初は興味のなかったJDだが、少年院で幼い兄弟がバワーニに口封じのために殺される事件が起き、少年たちを助けバワーニを退治しようと立ち上がる…
 【感想】
 冒頭、バワーニの両親がギャングに殺されるシーンから始まります。ギャングといってもトラック組合の組合員という正業があったわけですが、向こうは似たようなものなのか。そして、最初は圧倒的な暴力に痛めつけられていた少年バワーニが、自ら肉体を鍛え上げ復讐する様子は、むしろ彼が主人公かと思わせるほど。

 しかし、復讐を果たしたバワーニですが、結局は旧来のギャングになり替わり、そのうえ、少年院の子供たちに酒、麻薬といったアメと、犯罪の強制というムチで支配する極悪非道なボスになってしまいました。もし、バワーニの少年時代にJDに巡り合っていれば運命は変わっていたのにと、彼がどんなに非道なことをしても若干同情させられる悪役の造形はうまい。「2分以内に俺を倒せ」とか決め台詞もいいですし。

 一方、JDはコミカルに登場。大学で学生たちと踊り歌うシーンや、悪者たちをぼこぼこにするシーン。新人教員のチャールラタ(マラヴィカー・モーハナン)をはじめ美人女性たちにモテモテというのは、いかにも典型的な展開でちょっと萎えました。しかし、学生会長選挙のエピソードから彼の魅力がどんどん増します。JDの大学教授時代のエピソードは全体からみると長すぎる感もありますが、でもJDの周りでどんな騒動が起きるのか目が離せません。

 少年院の教官になっても、「人生は短い、幸せになろう」と歌いながら収容者たちと踊るシーンなどは先生ぽい。そのままいくのかと思いきや、前半のコミカルさが薄れ、ハードでダークな展開になります。えっ、この人が死ぬのという人が死んだり、教師なのにいくら悪者でもこんなに殺していいのかと突っ込みたくなったり。アクションも結構痛そうな、韓国映画っぽいのも多いし、大型トレーラーのカーチェイスもあるなどサービスは満点です。

 ローケーシュ・カナガラージ監督はやはりハードでダークなアクション「囚人ディリ」の監督でもあり、今作でも典型的なインド映画とみせかけて、単なる御約束事では終わらない感じですすみました。オチも普通のヒーロー映画ではまず考えられない感じです。また、貧困による少年犯罪だけでなく、腐敗した選挙の意味といった社会派テイストまで盛り込むのも持ち味です。

 ヴィジャイはタミル語映画界のスターで「大将」があだ名だそう。悪役のヴィジャイ・セードゥパティも「タミル民の宝」と呼ばれる演技派スターで、インドでは大ヒットしました。バワーニの手下で少年院を牛耳っているダース役のアルジュン・ダースは、「囚人ディリ」の悪役に次ぐ重要な悪役ですが本作では美味しい役柄。でも、さんざん悪いことをしてきたのに、オチはそれでいいのかという気も。

タイタニックのパロディのとき、BGMまでタイタニック調になっていたり、怒り狂った決め台詞が「切り刻んでカレーにしてやる」など、声を立てて笑いそうになりそうなシーンもあったのですが、単純に爽快というよりもっと重たい手ごたえを感じました。
posted by 映画好きパパ at 06:04 | Comment(0) | 2022年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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